朝起きてトーストとコーヒー。さして急ぐわけでもなく家を出て電車は遅れている。『群像』の掲載作を読み終え、『文藝』に移る。この二冊をリュックに入れていくのはなかなか腰がやばい。なんだか靴もうまく履けないでいて、指先が痛いし、足裏が地面からしばきあげられるような感覚がある。これが、ぴえん、という感情。ひとつひとつの体のしんどさ重だるさをなぞるように確認しながら、一日が過ぎていく。柚木麻子「ゴーホーム美容沼」を読んで、他人を気遣い、いたわるような行動をとるというのは素敵なことだと素直に思い、帰ったらそうしようと思っていたのだけれど、玄関をくぐるやいなやぐったりしてしまい、奥さんも筋肉痛でのっぺりしており、二人で冴えないままだった。せめてもの抵抗としてアイスを、抹茶とラムレーズンの二種を分けっこして食べた。あとは深追いせずにさっさと寝た。日記は、と訊かれ、こんな日に書いてもつまらないよ、と返したけれど、いやいや、つまらない日の日記のほうが後から読み返すと面白いって何度も繰り返し書かれていたよと指摘される。そうだね、でも、今日この状態で書いても面白くないよ、そう話しながら瞼が重くなりはじめ、まあ、明日になって書いても面白くはならないだろうけど……と言えたかどうか、意識が遠のく。じっさい翌日にこうして書いていても、面白いところのない一日だ。