昨晩気持ちが限界でなんとなく広告が目についた『フードコートで、また明日。』という漫画をKindle に落としていて、限界なので寝ちゃったのを朝読んだ。ちょうど読みたかった感じのやつだった。絵の感じがすごく好きで、ころころ変わる表情がぜんぶいい。性暴力の描き方やルッキズムの気配にモヤモヤしながらも、おおむね楽しく読んで、僕は『THE3名様』や『やっぱり猫が好き』など、とにかく人が駄弁っているのを見るのも読むのも大好きだった。そしてそういう琴線に「OVER THE SUN」はめちゃくちゃ触れる。
作業のお供は「OVER THE SUN」、そして『男はつらいよ』。嫌な作業中はめちゃくちゃ脳を忙しくする。そうすると感情部門はビジー状態なので虚無の気持ちで作業ができる。もちろん効率は悪い。しかし効率もなにも手をつけないよりは効率を落としてでも手を無心に動かし続けるほうがずっとましではないか。寅さんは予想外のことが起こらないから弱っている時も安心して観ていられると思ったら、急に子供が玄人っぽい子に変わったからびっくりした。いまさくらの息子の名前が出てこないのにもびっくりしている。さくらって平仮名であってたっけ。調べればいいものをなぜ調べないのか。何でもかんでもインターネット準拠で書いてもなにも面白くないからだ。インターネット準拠での正解がいちばんなんだったらインターネットを見ていればいいのであって、わざわざ自分で書くのであればまちがうことにこそ独自性というのは宿るのだが、そもそも独自性なんかいらないのではないかという気もする。家出をしたい気持ちが湧いてくる。
それで仕事を終え、ZOOM でわかしょ文庫さんとおしゃべり。ポッドキャストの録音という名目で、ほとんど初めてきちんとお話をする。前日から『ランバダ』を読み返して、誘っておきながら、怖い人だったらどうしようと緊張していたが、とても楽しくお話しできて、一時間の予定が二時間話し込んでいた。抽象的な制作論めいたことから、具体的な己の卑小さについてまで、ずいぶん素直にお話できた気がして、それはもしかしたら僕の中のジェーン・スーや堀井美香が作用していたかも知れない。
久しぶりに時間を忘れておしゃべりをするというのをやって、僕はすっかり元気が出て、ずっと家にいたにもかかわらず三日ぶりくらいの気持ちでただいまと言った。よく帰ってきたねえ、と奥さんは目を細める。