2025.03.19

起きれる気がしない。昨晩はiPhoneを図書室に置いたままで、カビゴンを寝かしそびれた。ぼうっと目を開けると土砂降りの音。さらには轟々と言う雷。ああ、もういいや、と諦めて、寝れるだけ寝る。出勤する奥さんが起きるところは見た気がするし、何か話したような気もする。猫は鳴いていたはず。耳栓をして寝続けた。奥さんはいつの間にか出ていて、僕のiPhoneは枕元で充電されている。親切な人だ。何度目かの雷で起きる。人間を呼び続けていた猫は諦めてふて寝している。ごめん。

労働を開始する前に浴槽を洗い、湯を溜めているあいだにトーストとコーヒー。外を見ると霙のような感じ。積もるというよりは凍りついていく。湯船に塩を入れてじっくり温まる。ようやくなんとかなる気がしてきた。というか、なんとかするぞという気持ちが持ち上がってきた。やっぱり体はさっぱりしていたほうが気持ちがいいし、冷やすと老ける。

今から出ては流石にいろいろ間に合わないので、在宅に切り替える。猫は起きてこない。退勤後、稽古のために片道二時間移動するので本は読めた。『霊性の日本思想』。安倍やトランプの政権を、近代的合理主義の普遍性——ウェーバー的な「脱魔術化」——が失効した後の再魔術化の徴として読むような箇所があり、僕がこの数年、明治期の心霊研究についてあれこれ読んできた気分の輪郭がより濃くなってきた気がする。

稽古は楽しかった。家から向かうので大幅に遅刻し、あまり時間がなかったのだけれどしっかり進む。丹澤さんがすごい。僕はただすごいすごいと言っているだけ。

家を出る時、ちょうど夕飯に向けてそわそわする時間帯だったので、出かけようとすると猫は、え、めしは? え、めしは? え、なんで置いていく? え、めしどうすんの? え、めしまだ? と付き纏ってきてかわいそうだった。だから帰って、ごはんはいつもの筒から出てきたよ、めっちゃうんちしたから片しといて、あと遊んで、それからお腹で寝かせて、と出迎えてきて、上着を脱いで早々にトイレの掃除を済ませた人間に、はやくついてこいとばかりに二階に先導するお尻と、うきうき上向いた尻尾を眺めながら、つい、かっかわいいねえ……!と声が漏れる。ひっつきあって、本を読んでいたら本に頭突きしてきたのでしばらく本を置いて猫だけに集中する。見つめ合い、撫でまわし、満足してもらえたようなので本を読んだ。奥さんは夜更けに帰ってきた。ただいまあ、と階下で声がすると、ふんすっと僕のお腹を踏み切って跳んで行った。薄情ものめ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。