2025.03.29

リュックには『アンチ・ジオポリティクス』。大きさと重さからすれば家を出る前の朝に読む本だったけれど、なんとなく外で動きながら読むのがよいだろうと思って無理して持ってきたが、無理だったかもしれない。重い。花見以来カメラも入れっぱなしになっていて、このほんの数百グラムの差でいきなりずっしりくるのだから重たさの感覚というのは繊細なようなどんぶり勘定のような。

政治が理性の現場であるという建前すら取り繕われなくなり、ただ情動だけが動員の要因とされる政治において、じっさいの生活基盤の強固さは透明化され、感情の強弱だけが問題化される。そのとき、ほんらいは抑圧する側であるにもかかわらず、〈「弱者」のほうが優越しており、「強者」が「弱者」に不当に包囲されているかのように転倒的に想像してしまう〉。その結果、より強いものが弱いものを恐怖し、打ちのめすような社会へと流れ込んでいく。易きに流れるのが世の理なのだというのは、このようなクソな現状を追認するものわかりのよさに過ぎない。しかし、とはいえ、易きに流れるよなあ。過半数が難しくて面倒なことをわざわざやる、それも強制されることなく自発的に、というのはありえるのだろうか。

機械書房の百冊の『会社員の哲学』が完売したらしい。二年ほど、大事に売ってもらえて嬉しい。今週発売の『随風』はすでに百冊以上売れているとのことで、他の店でもどんどこ売れているのならすごいことだ。ぜひ批評欄も注目されてほしい。

亀有のニトリで奥さんと待ち合わせ。夕方早めに着いたので、栄眞堂書店やSKWATをひやかす。栄眞堂書店は面白かったからまたゆっくり見たい。SKWATは洋書に値札がついてなくて、売る気はなさそうだったので白けた。奥さんと合流して、ニトリでソファを試し、よさそうだったので買うことにする。そのほかあれこれ見て、一階の洋菓子屋でお菓子を食べて、ダイソーも見て、あれこれ買う。

近所の駅まで移動して、よさげなお店に入る。夫婦で切り盛りしており、あまり客層に恵まれないのかちょっと余裕がなさそうだったけれど、料理はとてもおいしい。見送りの際には愛想が出てきて、人見知りなのかもしれない。それで客商売はたいへんそうだ。お酒も飲んでごきげんに帰宅。眠くて眠くて仕方がないけどお風呂には入る。死なずにあがることができた。それからすこんと眠る。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。