2025.04.08

久しぶりに七時に起きることができる。猫をなだめ、二行だけ読んでソファで寝落ち。八時半に正気を取り戻し、九時半までベッドで二度寝。三度寝だろうか。僕の身長に横幅が三十センチ足りないソファでの睡眠は、寝た気がしないので寝るだけ損だ。でも寝ちゃう。寝ちゃったけれど、一瞬でも七時に起きられたというので気分がいい。焦らず、朝方に戻していきたい。朝がないとてきめんに本を読まない。これまではどうしていたのだっけ。生活リズムの書き直しは難しい。僕は朝のあるリズムにしたい。朝の調子に乗りたい。寝坊助の調子に乗らされていてはいけない。読むべき本と、読みたい本と、読まなければいけない本がある。一冊ずつしか読めないので、たいへんなことだった。焦らず、まずは読まなければいけない本を、さも読みたい本かのように、あたかも読むべき本であるように、夢中で読まなければいけないので、そのようなコンディションを整えていく。つまり、まずは読みたい本を読んで、それを足掛かりに、読まなければいけない本こそがいま読むべき本であるという理路をつくる。そうやって、読みたい本へと近づけていって、わくわくしてきたら読み出す。そうすると楽しくなる。

『耳のために書く』は副題の「反散文論の試み」という副題に惹かれた。いまのところ、編者の序文と巻頭論文にぐっときて、そこから徐々に関心との距離を感じるものもありつつ、面白く読んでいる。論集は充実した内容をコンパクトに、ちょっとずつ読めるからいいな、もっと読みたかったら参考文献や単著に飛べばいい。すでにマクルーハンとオング、クロスビーを買い込んでいる。ちょっとずつ読める、というのであれば朝読むのに適していそうだ。『アンチ・ジオポリティクス』は重さで持ち運びを断念したが、朝の明確に家出る時間が決まってるところで読むには歯応えがあり、それもまた朝の目覚めへの動機を弱めていた。朝に反散文すればいいんだ。

夕食とお風呂のあと、奥さんがあすの観劇のため劇場に比較的ちかい友人の家に泊まりにいくので、駅まで送る。それから僕もお泊まり気分が欲しい、と思い、収納からTherm-a-Restのマットレスを取り出して、猫の寝床の近くに敷いてそこで寝ることにする。バルブを開けると勝手に膨らむ。たぶんけっこう高価なやつ。そういえば、これは祖父の形見ということになるのかな、と思う。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。