2025.10.29

なんでもいいから本を読まねばとKindle Unlimitedの積読を掘り崩し、まず『誰が勇者を殺したか』を読んでみるとするする小一時間もかからず終えて、そうなのか、ラノベ原作のアニメは読んだほうが圧倒的に速いのだろうな、と思いながら、とにかく読み終えたぞと言う手応えで元気が出てきて、そのまま樫村愛子『ネオリベラリズムの精神分析 なぜ伝統や文化が求められるのか』に手を出し、あ、これはいま読むとまた違う味がするやつ。

本が読めると元気いっぱい。ダイニングテーブルの上を片付けて、ゴミをまとめておく。二階に掃除機をかけて、髪を切りに行く。さっぱりして、もっとさっぱりしようと銭湯に出かけていく。露天に浸かりながら、夕暮れていく空を眺める。青空に烟るような雲が薄桃、濃いピンク、黒みがかった朱色、灰色へと染め変えられていくなか、後景の青もだんだんと緑がかりながら藍色へと沈んでいき、とうとう黒に近づく頃には湯からあがってコーラを飲んだ。ふう。明日は福岡行きの荷造りと、いまさらではあるが諸々の告知をふんばりたい。本当は、遠隔での制作だとか、カハタレの紹介だとか、面白がってもらえそうな発信の工夫はいくらでもあった。けれども、日々の労働の合間を縫ってだと、台詞覚えと稽古だけで精一杯で、さらには季節の変わり目のぐったりが重なりまるで何もできなかった。労働しながら演劇やったり、本作ったり、ポッドキャスト録ったり、みんなすごい。すごいよ。毎日の日記というリズムさえぐずぐずになっているのがよくないのかもしれない。とにかくこれだけはやった、という手応えがないとすぐ人は卑屈になる。杖としての日記。寝る前奥さんとモーニングルーティンの話をする。そう、自律としての習慣は、日々を縛るものでもあるが、そうした自発的な自縄自縛こそが、忙しさや、疲れや、気候病によって容易く乱れる日々のリズムをキープする。習慣の新調が待たれている。誰に。もちろん僕に。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。