2025.11.04

次の本の準備のために本にまとめて眼を通す日にする。まず本棚の整理をする。とくに文庫の棚は引っ越しの時にてきとうに詰めたきりだから耕し甲斐がある。続きものが並んでおらず別々だったりするくらいだ。本を移動させながら使えそうな本をとにかく床に展開していく。ぜんぶで四十冊くらい。これを今日明日の二日間で読む。読むといってももちろんまともには読めない。とにかく全ページに眼を通す。下茹でや油通しのイメージで、とにかくざっと眺めて、目に留まったキーワードを拾っていく。これだけでもけっこう内容は把握できるというか、むしろディティールをすべて見落とす代わりに一冊を通しての全体像のようなものをぼんやりと察知できるので、ふだんから大部の人文書なんかはこのようにして下拵えしてから読むべきなのだろう。六時間ほど根を詰めて、そのうち四時間はルドンが膝で寝ていた。満足のある疲労。

福岡で公演記録を撮るのに使ってその性能に感心したのもあり、また動画へのやる気が出てきた。DJI osmo Pocket3 でルドンをたくさん追いかける。なかなか歯磨きをさせてもらえなかったり、ズボンの紐に飛びかかられて腰が引ける滑稽な様がたくさん撮れて満足。こういうのはとにかく気軽に量をこなすべきで、毎日触るのが理想ではある。

息抜きに『ファイナル・デスティネーション』シリーズを見始める。ありふれた電化製品や風景が死の予兆にしか見えなくなってくる。見たら風が吹くのすらも怖くて出歩けなくなるし、コンロもトイレも危ないから家にもいられなくなるかもしれない。ホラーは非日常ではなく日常にあるからこそホラーなのだとよくわかる楽しい映画で、このとにかくどう風が吹いても儲けではなく死に決着してしまうドミノ倒しの楽しさは、たしかに続編をつくりたくなるような誘惑がある。自分だったらどんな形で些細な事故を連鎖させて大惨事を引き起こそうかと考えるだけで愉快だ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。