2025.11.05

今日も数十冊の走査。書くための準備となると、読むというよりも使うという感覚が強くなることがあり、基本的にこれは楽しくないのでやらないのだけれど、使えそうな本が大量に溜まっているとそれはそれでメモリが圧迫されるので、ひとまずぜんぶに眼を通すことで、じっさい楽しんで読めそうな本と、しんどそうだが読むべき本と、読んでもわからなそうな本とを仕分けていくことですっきりできる。本屋でこれがやれたらもうすこし買う本が減らせるのかもしれないが、これはこうして家にある関心を軸にして揃えられた数十冊を二日か三日かけて一挙に処理するからこそいいのであって、店内を歩きながらの立ち読みとはやはり別だ。じっさい、やってみるとやたらと同じ固有名詞が頻出したり、近接した刊行年ごとの必読書というか、読書界の傾向というものが浮かびがってくる。五年前の僕にとってそれは明らかにプルーストだったが、いまではセルバンテスとラブレーそしてフローベール、紀貫之に菅原道真だ。

こうして本に溺れているとまじでいちにち座りっぱなしで動かないから血行が滞り目が疲れ、頭痛がしてくる。散歩しながらやりたい。毎日六千歩は歩かないと頭も悪くなる。以前奥さんに提案されたことがあったが、いよいよルームランナーが欲しい気がしてきた。

三作目の『ファイナル・デッドコースター』に既視感があり、とうとう予知ができるようになったかと思ったけれど、日焼けサロンのシーンで、あ、これ見たことあるわ、と確信する。見たことあるのに日焼けサロンのシーンしか覚えていないのは、ホラー映画で雑に出てくるおっぱいにしか興味がない時期に見たからだろうか。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。