2025.12.16

『奔放な生、うつくしい実験』を読み終える。前半はじりじりと這うように読んでいったが、リズムが浸透してからは一気に読まれた。最高の本だった。今年の、とかではなくこの生にとって大事な本になるだろう。気ままに無為であること、それこそが掴み取るべき奢侈である。とるに足らない存在、いてはいけない存在として、警察や裁判所や矯正施設の調書や文書のなかに、ありふれた不穏分子として記された者たちの生の断片。不良のwaywardわがままなwayward強情なwayward厄介なwayward不都合なwayward女たち。彼女たちを抑圧することを目的として、外から形容するこの語彙waywardを、奔放な、と読み替える。

このようにして、台無しにされた生の可能性を、そこにあったはずの固有の生の迸りを、ハートマンは物語り直す。この本は、批評とは想像力のことであると体現している。この本を賛するにふさわしい言葉は、とっさには出てこない。何を言っても社会学者や調査員めいた、奔放さを損ねるようなことしか書けないだろう。だったら黙って、これからの生で体現していくほかない。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。