風がすごく強くて窓が鳴り、家も揺れているような気がした。自宅は木造だから納得できるが、ここは石造りで、そのほうがよっぽど風の強さを実感する。けっこううるさくて寝るのに難儀する。温まりにくる猫もいないからさびしい。九時前に起き出して朝食を摂るも、そのあとベットで本を読んでいたら寝落ちてしまい、気がつけば十三時だった。
朝のうちに連絡が来ていて、きょうご一緒するはずだった松井さんが風邪を引いてしまったこと、椎茸はやはり収穫するべきところまで育ったことがわかった。どちらも残念だけれど、またの楽しみができたと思おう。昼は父の作った餃子をいただく。きょうはまだ食って寝てしかしていない。実家というとどうにも気分が弛緩して、とてもよい。こういうのびのびした気持ちでこそ読んで書くべきだろう。暗くなるまで本を読み、原稿を書いた。原稿を書いていると日記が疎かになるが、日記こそ息抜きに書かれるべきだった。こんなにすぐにすいすい流れる書き方もないのだから指も頭も喜ぶ。ほんとうだったら原稿も同じように書いたほうがいいようにも考える。しかしこれはまだ思うというより考えているから機が熟していないのだ。
だからもうすぐに夜で、松井さんがいないということは僕は一人でBAR GENESIS に向かうのだ。俄かに緊張してきて奥さんに連絡する。でも奥さんも忙しいだろうし、そもそもギリ子さんが好きなのは僕なので、この緊張に同調されることはない。でも一人じゃ抱え切れない。松井さんは熱出してるから寝てて欲しい。そこで東京の年上の友人にLINEした。履歴を見たら個別で連絡を取るのは二年ぶりとかだった。これから行くのですと打つと、えっっっっっっ、と返ってくる。ことの大きさをわかってもらえて嬉しい。いろいろ耐え切れなくなったら実況してもいいですか、と問うて、よいとのことだったので道中から落ち着かない心情を聞いてもらう。オタクが言う「助かる」ってこれかーと思う。以下、送信履歴から抜粋。
ひょえ
めっちゃ繁盛してて、高速で厨房とカウンターを往復し続けている先生の迫力に気圧されて写真撮るタイミングが遅れましたが、小島麻由美が流れるめちゃおしゃれ空間です
アッ
例のアレが! お通しされた!!!(引用者補足:とんがりコーンのアレ)
暗くはある(引用者補足:作中に出てくるバーはすごく暗い)
法的に問題ない範囲で
(引用者補足:単行本は持参)してる…
でも忙しそうだからまだオーダーしかできてない…
キョドってる…
こころづよ
ホストやるのと客やるのは違うというか、客が苦手だからホストやるんだよなーと痛感してます
アアアアアアアアッ
結構こなれてた! 怖がり終わってる(引用者補足:単行本のカバーを外した裏表紙には「本当にサインをもらいにいって作者を怖がらせましょう!」と書いてある)
しかし、目の前で殿宮アイが生み出されるのに立ち会えたの、なんか(引用者補足:サインには宛名だけでなく、好きなキャラクタをひとり描いてもらえたのだ!)
空想樹と共に消滅してもいいような気持ちです(引用者補足:いまはFGOの最終章が進行中でもある)
もうねェ
酔っ払ってます!
えー、殿宮アイのジンソーダを、いま頼みました(引用者補足:殿宮アイが好き)
すごい
推しと同じものを飲んでる
レトロゲームの棚前に移動しました
なんかすごいらしい
わからないが
隣のお客さんがたいへん興奮しているからすごいんだと思う(引用者補足:気さくな方でおかげで楽しい時間を過ごせました)
そう
それが何かはわからない
はーーー緊張した
おかげさまで正気を保てました(引用者補足:ご覧の通り、保てていない)
殿宮アイ生成の瞬間をお納めください(引用者補足:手許の動画を撮らせていただいたのを音声を消去して共有した)
(引用者註:キャラクタの描き順について)この順番なんだ…といみじですよね
殿宮アイでお願いします……に対して「あ、アイちゃん」と応えられた時点で何かが成仏しました(引用者補足:ご覧の通り、保てていない)
