2026.02.12

きょうは『モンキー・シャイン』を観る。一九七八年が『ゾンビ Dawn of the Dead』の大ヒットで、八一年に『ナイトライダーズ Knightriders』。さらに翌年の『クリープショー Creepshow』、八五年の『死霊のえじき Day of the Dead』を経ての八八年の作だ。事故で首から下が不随になってしまった男のために、科学者の友人は調教師の女性と協力して仕込んだすごく賢い猿を贈るのだが、この猿は化学実験のために人間の脳から抽出したやばいエキスみたいなのを投薬されており、そのためなのかなんなのか、次第に主人公の男と感情的に共鳴し、危うい共依存関係に陥ることになる。図式的に言えば文明と自然とが相互に侵食し合うような話で、猿は猿で男に恋愛感情のような独占欲を向けて他者を排除するし、男は男で猿に感化されて鬱屈とした怒りを制御することができなくなる。この後者の設定がすごい。ケアされる側にまわってしまったあとも男はつねに友人や母親や恋人の身を案じ、救けようとする傲慢なところがあるのだが、そのためにまずかれが打ち勝たねばならないのは突発的に湧いてくる怒りという激情なのだ。まず自分が感情に任せてひどいことを身近な人に言ってしまいかねないというところに怖さがある。しかも猿と男の感情は同期しているようで、たとえば勢いに任せて誰かに「死ね」と思えば猿が代わりに殺しにいってしまうのだ。男の野太い声での恫喝がいかに抑圧的であっても、首から下が動かせないのだからむしろケアしてくれる人々のほうに優位性が常に握られているという転倒もまた効いている。無力であるが、過度な代行によってむしろ力を得てしまう。男が猿と対決するのは、そのように歪に肥大化した自らの力を手放し、等身大の非力さへと回帰していくためのものなのである。おもしろーい。いい映画だった。

『実験の民主主義』と『男と女とチェーンソー』をすこしずつ読んで、夕方から文化系トークラジオLifeの打ち合わせ。打ち合わせに参加するのは初めてで新鮮。予告編にもお邪魔した。はんぶん意図的に質問に噛み合わないような受け答えをしてしまったから、よくわからない感じになってしまったかもしれない。真正面から受け取るのではなく、横に半分ずらして展開させるというおしゃべりを体現してみたかったのだが、ただ下手な人になってしまった感もある。聴いてみればわかるだろう。あす配信の「こじらせ平成夜話」の僕は、男の子のコミュニケーションのよくないところの煮凝りみたいになっているのを反省しての試みだったのだが、どうか。たぶんだめだったな。おしゃべりって難しいね。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。