神保町の古本博覧会の初日に行ってみた。昨晩は気圧のせいかさっぱり眠れず、奥さんと猫のいびきの合奏を堪能したり、どんどん容赦なくこちらのスペースを侵食してくる猫の寝相と格闘したりして四時くらいまで寝苦しい思いをしていたので、開場ダッシュは断念して午前中はゆっくり休み、しかしごろごろしながら読んでいた『社会秩序とその変化についての哲学』がどうしても読みたくて、けっこう重い本であるにも関わらずリュックに入れていくことになる。せっかくのお出かけなのでちょっと洒落のめして新しい靴をおろす。
電車の中で続きを読み、お茶の水から坂を下って東京古書会館へ向かう。盗難防止と混雑対策でリュックや荷物はすべて一階のおそらく搬入口をぶち抜いて設置されたクロークに預ける方式になっており、考えているなあと思うし、こりゃ中はすごいんだろなと察しがつく。三階のメイン会場に上がるとすごい人だ。集中レジへの待機列が室内の四隅をぐるりと囲んでいて、壁面の棚をみるには行列をかき分けなければならない。そのくせ、面白そうな棚は壁面に集中しておりなかなかに過酷。平日の昼間からやってくる古本好きだ。気合いの入りようもそりゃすごい。想像以上に熾烈で、みんな手ぶらだからあたうるかぎりの本の山を両腕で抱え込むようにして持った人たちが、腕ぷるぷるさせながら二〇分くらいの集中レジ待ち列に耐えてる。なんだかいい光景だったが、本をじっくり吟味するような環境ではない。それでもこっちだって平日の昼間からやってくる一人だ。目をギラギラさせて腕がぷるぷるするくらいの本を抱え込む。どうせいつか買う本をすこしでも廉価に手に入れようというのが今日のテーマで、バウムガルテンの『美学』、ドゥルーズ+ガタリの二冊をまずゲット。あまり値崩れしていない新装版をまず手に取ったが、旧版が手頃な感じで見つかったのでそちらに持ち替える。さらに『文学とテクノロジー』がテクノロジーに抗うクラフトと近年の興味にどんぴしゃで面白そう。並んでいるあいだに叩き売りコーナーから小栗虫太郎も載っけちゃおう。一万円弱でこれだけ買えちゃうのだからすごい。優に三キロくらいはあるんじゃないか。
すずらん通りまで出て東京堂書店で保坂和志『鉄の胡蝶』もゲット。古瀬戸でカレーとコーヒーで一休みしながら読み始めて元気になる。ちゃんべさんが合流してくれて、小川広場会場を見に行く。到着即解散でおのおの棚のどこかへと消えていくので頼もしい。こちらでは気になる本がどれも稀覯本価格で見送り。水道橋方面へと歩いてオトナリ珈琲へ。コインランドリーにしか見えない外観というか、コインランドリーなのだが、傍に傾斜の強い階段があって上がっていくと喫茶店になっている。ちゃらそうな店構えだけれど味は大人な感じ。レジのスタッフに国書刊行会トートだ、と話しかけられてさすがの場所柄を感じる。桜味のカクテルを飲んで、今年の桜はこれでおしまいだろうかと考える。鮫くんが労働を切り上げて合流しそうな気配があったので、合流地点をあれこれ吟味し西日暮里まで出ることにして、HAGISO がやっているっぽいクラフトビールのスタンドに行ってみることにしたら、一階が西日暮里BOOK APARTMENTで、初めて来た、すでに古本の棚を吟味してきたからというのもあるけれど、僕はやはりシェア型本屋というのはあまり得意ではないかもしれない。棚ごとのテイストやトーン、なによりクオリティがあまりにまちまちで疲れてしまう。鮫くん来て、階上のNight KIOSKで一杯。一杯と言いつつ、ハッピーアワーだったので二杯飲んだ。ぎりぎりまで引きつけておしゃべりして、アラームが鳴ったので電車に乗って帰宅。それでも夕食の時間はかなり遅めにしてもらった。お風呂に入って、もう眠い。明日は外労働だからきちんと起きなくてはいけない。日記を書いていたら二十三時半。そりゃ眠い。起きられる気がしないな。きょうルドンが添い寝してきたら奥さんの方へそっと押しやろうと思う。あんなかわいいのを独り占めしちゃいけないし。
