2021.05.17(2-p.53)

『ランバダ vol.3』を読み終え。前二作ではどこまで自覚的に引き受けているかやや不明瞭であった他者をまなざし書く側であると言う特権意識を、明示的に引き受けた上でいま一歩他者に踏み込んでいくような文章が並び、シリーズ最高傑作ではないかと思う。思えばわかしょ文庫さんの文章は、露悪的なようでいて、いつもどこか倫理的だった。それは単なる露出狂的暴露ではなく、「作文」として幾層か作為的な操作が為されているからかもしれない。そうした他者を描く際の操作の是非も含めて、前作まではどこか居心地の悪さがあったし、その居心地の悪さこそが持ち味でもあったのだけど、ここにきて、ああ、この居心地の悪さは書き手の無自覚な傲慢さに対するものではなく、だいたいのことをちゃんとわかっている書き手が冷徹に意図していた効果であったのだな、と気付かされる。これはすごいなあ。

『SAPA』は取り急ぎ巻末の座談会とチェンソーマン考を読み、たまらなくなって『チェンソーマン』全巻を一気に再読。チェンソーマン大好き!こうして一気に読むと、リアルタイムでは振り回されているばかりだったけれど、破天荒に見えてひじょうにウェルメイドな構成を持っているのだなとわかる。

夜は生姜焼きを作って食べた。その後『読書のおとも』の刊行祝い兼文フリ打ち上げをZOOM で。録音もさせていただき、来週のポッドキャストとして配信させていただく予定。一冊の本を一緒に作った皆さんとこうして楽しくおしゃべりできるのはなんだかとても嬉しくて、本を作ると友達が増えると言うのはなんだかいいことだなあと素直に思う。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。