2021.10.02(2-p.166)

台風一過で気圧も気分もアゲアゲ。

録音の前に話題をTwitterで募るとわかしょ文庫さんが「秋冬のお楽しみ」というすてきな話題をくれた。じゃあそんな感じで話しましょう、とボイスメモを回すと僕も奥さんもまあ喋る喋る。夜に音声チェックすると二人とも酔っ払ってんのか? みたいな異様なテンションで、珍しく二人して主語をどんどん膨らませながら与太話を盛り上げていた。ソファの上でじっとしていられず二人とも動き続けるので、ギシギシとソファの軋む音ががっつり入っていて、流石にこれじゃあ行けないと久しぶりにAudacity でノイズ除去の処理をかけたほどだ。話はすごい勢いでどんどん拡散しながら転がっていってしまうので、秋冬のお楽しみについて喋れていたかどうか心もとがないが、ボラの話はできた。

それで録音を終えると弟からの通知があって、デモ音源だった。すでにめちゃくちゃ格好良く、ぜひこの方向で! と返信。どんどん気分が高揚していく。いい天気だなあ! ランチデートに出かけましょうよ! そう、すでに夕方以降の反動が容易に予測できるほどのハイだった。二人でマスクをしながらぺちゃくちゃ喋り続けながらランチを食べに出かけ、お気に入りのお店は開いていなかったので入った別の店は不味くもないが一つの料理に味が一種類しかないような単純さでたくさんの料理が何種類もあるようなプレートだから良かったがすこし飽きた。それから漢方薬局で薬を誂えて、コーヒー豆を買って、街にはキャッチのお兄さんが張り切っていたり、カラオケはどこも満室だったり、宣言明けのうきうきに満ち満ちていた。ここで一気に気を緩めてしまってはだめだ、とわかっていながらも、浮ついてしまうよねえ、だってこのタイミングでの台風一過だ。上がってんの? 下がってんの? 皆はっきり言っとけ(上がってる!)

カラオケは本当にどこも空いていなくて、仕方がないから大人しく帰ることにする。完成品が納品されて、何度も聴く。これは嬉しいなあ。奥さんにも聴いてもらって、河原のベンチでイヤホンを半分こしてまた聴いた。早くお披露目したい! 河原はどんどん夕焼けていって、作り物のように綺麗だった。シャボン玉で遊ぶ子、太った芝犬を連れた人ともっと太った芝犬を連れた人の交流、走り回る子ら。みんなこれが最後のチャンスだと、この夏を取り戻そうとしている。いい日だったな、と思うが、奥さんの目はどんどん光を失っていって、奥さんが本当に小さな子供だったら、抱っこ、とぐずりだしていただろう。大人なので自分の足で帰れた。偉かった。シャワーを浴びたら布団に転がった。僕はナディアを見ながらカレーを作って、今度は僕が力尽きて泥のように眠ってしまった。上がってんの? 下がってんの? 皆はっきり言っとけ(下がってる!)

起きてカレーを食べるとカレーを作るのが上手な人のカレーの味がして元気が出てきたが、もうなにひとつしたくない、という気持ちにもなっていた。日記もポッドキャストも面倒くさい。きょうはもうなんにもしたくない!

そう思いながらパソコンを開いてちゃんとnoise除去までしてポッドキャストの配信をセットして、こうして日記まで書いている。習慣の強力さはすごい。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。