2021.10.18(2-p.166)

朝起きて昨晩遅くにいただいた嬉しいメールを確認する。期日の迫った項目への回答を含めてお返事しようとしていたら、お風呂に浸かりながらこの日記の下書きを書いている23時23分時点で返信メールは一文字も打たれていない。仕方がない、明日だ。メールは基本受け取ったその日に返しているのだけどそれは律儀なのではなくて単純にそうしないと忘れてしまうからだ。だからいまiPhoneのNotion のアプリからTodoist に切り替えて明日のタスクに「メール返信」を加えておいた。これで安心だ。なぜこんな時間になってしまったかって、夕食後いままで奥さんと『月姫』を遊んでいたからでノベルゲームというのは中断のタイミングを簡単に見失う。いまはトゥルーエンドに向けてフラグを回収して回っているところで、つまりは頭からやり直しては試してみて、というのを繰り返す作業でようやく目新しい展開が始まる頃には23時を超えていたのだった。

最近は奈須きのこ漬けで、地元の駅前の本屋──いまでは接骨院だから整体だかジムだかになってしまった──で『空の境界』を立ち読みして四ページくらいで放り出した中学生くらいの僕からしたら驚くべきことだ。今でもすごく好きというわけではないのだけど、ネロちゃまのことを知りたい一心で追いかけているうちに楽しむための自分なりの距離の取り方もずいぶんわかってきた。FGOはいわゆる「単引き教」というやつで、なけなしの石30個で11連を回した後に、札や石3個で引く最後の一回でエレちゃんもエリちゃんも引けた。この二人を育て上げつつ、EXTELLA のアルテラの声に耳を澄ませたりしている。

午前はポイエティークRADIOの配信チェック。さっそく感想ツイートがあって、ゾンビはすごい。あと五回の開催が決まった。さっそく来月の録音の日取りを決める。これに備えて『セーラーゾンビ』を視聴すべくauのプレミアムなんたらの会員登録を行った。さっそくたらたら見つつ、合間に『反逆の神話』を読んでいく。これを読了してしまうと『会社員の哲学』を出す意味を見出せなくなりそうな気もした。反動ではなくまっとうに実践者たろうとすれば、原理主義的なナイーヴさから見れば半端で妥協的な「中道」のような態度を示さざるをえない。ポーザー、という言葉がいつだかタイムラインの一部を賑わせていたけれど、カウンターカルチャーや「買い物という投票」言説は基本的に消費社会のオルタナティブどころかメインストリームであり、差異と希少性による価値判断は現代資本主義を駆動させる基本原理である、というこの本の主張はいたくまっとうで、三分の一ほど読んでここまでに引用される書名も含めてほとんど既知の本でありつつ、既知でありながらモヤモヤと言語化できていなかった部分が整理されていく感じもして、この読書で整理される前の混沌をパッケージしておくべきだ、と思い立ち、えいやっと『会社員の哲学』のデータを目星をつけていた印刷所に入稿してしまった。その勢いでよくよく考えもせず日記本の入稿もする。前回までとは違った規格で違ったところにお願いをするので、出来上がりのチェックも兼ねたβ版という扱いで、両方10部足らずの部数で注文を入れた。月末には届くだろうから、文フリに向けた修正が必要かどうかを本の形でがっつりチェックしつつ、β版は廉価で11月4日のブックフェスに持っていこう、という考え。とにかくこれでZINE の制作についての試行錯誤や考えは強制的に半月ほど一時中断とした。そこからどれだけ手を加える必要があるかどうか、それは仕上がりを見て考えよう──日記本のほうは、誤字の拾いがまったく間に合ってないからたぶんなにかしら必要になるだろうけれど……

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。