2021.12.24

昨日から首を寝違えていて、湿布を貼ってだいぶマシになっていたとはいえ、そもそも今月はなんだか忙しかったから自覚できていなくても疲れが溜まっているだろう。そう思い昼休憩に行きつけの鍼灸院に行くことにした。鍼のズンと響くところが右側にやけに偏っていて、寝違えも右の首から肩にかけてだったので全身が右傾化しているようだった。肩甲骨まわりだけは左側がごりっごりですね、とのことで、ヒイヒイ言いそうなのを堪えた。別に堪えなくてもよかった。今日は強めに打っているから、だるくなっちゃうかも、とのことで、早めに帰ろうと思いつつ、コーヒー豆が買いたくて寄り道。ついでに今度約束のある場所を確かめておこうとさらに遠回り。コーヒースタンドは休みだった。あれえ。そのまま歩いて、家に振り込みしなきゃと個人口座から給与を引き出して、コンビニで家の口座に振り込む。コンビニの近くにいつの間にかコーヒー屋さんがある。というかもう五年近くやっているようだからむしろこちらのほうが前からあった。なんならこちらのほうが家から近いのに、全く気が付かなかったというか、これまでにも存在は知っていた気もするがなぜだか行ってみようという感じにならなかった、そのお店がついに意識に上った。試しに行ってみる。休業日だった。なんでそこまで調べないのだろう。いい感じの外装だったので明日の楽しみにして、コンビニでコーヒーを買って帰る。コーヒーのち昼食。労働の途中でたしかにくったりしてしまって、お昼寝。そのまま布団の中で労働。うたた寝。労働。体に悪そう。

退勤後は『月3万円ビジネス』。なんでも自作してしまう発明家のおじいさんという感じで本当に愉快な気持ちになる。家や車も自分で改造していた祖父を思い出す。僕は起業精神旺盛な発明家にどうしても惹かれるらしい。奥さんは急に、さむい、と言いながら手袋を編み始めていて、こういうDIY精神というか、とりあえず自分で作ってみる感じが僕はとても好きだ。奥さんはZINEの管理スプレッドシートも作ってくれるし、ブースの装飾や、お芝居の舞台も作ってくれる。我が家の頼れるエンジニア。『It Takes Two』のメイもエンジニアだし、急に猪突猛進になる感じも奥さんと似ているところがあるけれど、コーディはそんなに僕に似ていない。とにかくローズが不憫。しかし似ていないとも言えないかもしれない、たとえば僕も庭が憧れるけれど庭にはすぐ飽きて荒れ放題に放っておいてしまうのだろうな、とは思う。『月3万円ビジネス』に片方が頭でっかちに田舎に憧れて、もう一方が都会っ子だと、引っ越した後ロマンだけではどうにもならなくてお互いにガマンしかなくなる、みたいな駄洒落があったけれど、僕はまさにロマンだけで思い込みがちで、奥さんはとことん実際的だ。僕はお金の管理が本当に苦手というか得意すぎて、毎月一円単位で使い切っていた。だから全くお金が貯まらない。同棲を始めた時、奥さんが実家暮らしだったことを差し引いても貯蓄額の圧倒的な差に二人とも愕然としたものだ。だから結婚前からお金の管理は奥さんに委託している。奥さんは結婚もしないうちから人の財布を管理していいものだろうか、別れる時に面倒だな、と迷って自分の母に相談した。奥さんの母は、自分が先に死んじゃったら可哀想だけどなるべく面倒見るつもりならまあいいんじゃない? と応えたそうだ。僕は奥さんを看取る気満々なのだが、そうしたらそのあとお金に困るかもしれない。月に三万円稼げるようにしておきたいな、と思う。本で提唱されるのはローカルビジネス前提の話だけれど、都市型人間でもできるスモールビジネスを妄想したい。たとえば手帳は毎年帯に短し襷に長しな気持ちになるから、僕の考えた最強の手帳を作ってみたい。しかし、僕の考えた最強の手帳って結局は大学ノートに自分でその時々でカスタマイズする手帳なんじゃなかろうか。奥さんの仕事用の手帳はジャポニカ学習帳の「社会」だ。奥さんはこれをとても格好良く使っている。手帳、作ってみたいな、という気持ちは案外しぶとく、今日は一日構想を練っていた。来年は服やゲームや手帳を作ってみたい。本だけでなく、なんだか愉快で大したことないものを、車輪をわざわざ再発明するようなことを、たくさんしてみたい。すっかり年の瀬気分で来年のことなんかを考えている。ただの来月なのに。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。