楽しく過ごすのが下手になってないか?
この二年、自粛の必要に応えるという名目で僕は無理をすることがなくなった。それは楽をするということで文句なしにいいことのようで、そうでもない。僕はこの二年でますます、体調が悪い時は体調が悪く、冴えない時は徹底的に冴えない人間になった。奥さんが元気がないと、僕も元気がなくなった。しかし、それでは楽しくないのだ。楽しさとは、ちょっとした無理や強がりが必要な時もある。調子が少し乗らなくても外に出てみるとか、自分も元気がなくても元気がない相手がいたら余裕のあるふりをしてちょっと手伝うとか、そういう些細な無理というほどでもない無理──しかし一度サボると癖になってしまってなかなか再開できない無理をしてようやく楽しくなれるという日が、一年のうち三〇〇日くらいあるのだ。ちなみにのこりの五〇日はどうあがいてもだめな日。あとの十五日は自分では絶好調だと思っているけど側から見たらスベり倒しているか、翌日ぶっ倒れる日だ。そう、安心し切って万全に楽しい日など存在しない。
奥さんと近所を散歩して、おしゃべりしてお茶をして、酒屋でお酒を買って帰った。ものすごい陽気で、歩いているだけで楽しくなってくる。べつにこれくらいでいいんだよな、と思う。晴れた日に一緒に散歩するだけで十分に満足できるのだ。なんも面白いことない、と表情筋が死滅したような顔をしている時にこそ、お互いに散歩に引っ張り出すほうがよかったりする。
お酒をちみちみやりながら、舞台の配信を観る。ペダステが好きなのかシャトナー演出が好きなのか見極めたくて『灼熱カバディ』の千秋楽アーカイブ。めっちゃ面白かった。ぬるっと素っぽい感じで始まって、一言でがっつり役に入る導入からしていちばん好きなやつだったし、役者の技量不足をも「こいつらはまだまだ強くなる」みたいなスポ根漫画の先輩みたいな気持ちで優しく見守らせてくれるストレスの少なさ、座長の初々しさを前面に押し出してとにかく頑張っていれば魅力的になるような仕掛けづくり。とにかく演出のすべてが観客に役者を好きにならせることに方向づけられていて、演出に応えたぶんだけ役者が輝くお芝居で、ほんとうによかった。いま、座長の子が可愛くて仕方がない。遊びまくれるポジションの人たちも伸び伸びとしていて、エーステのユキちゃんはいつも通りの感じだったけれどなんか頑張ってた。ニコニコしながら観て、楽しいなあ、と満足する。ペダステと違って今回はアニメを先に観ておいたのだけど、違和感がなくて、もとの作中人物のイメージを損なわないままにしっかり役者の色を重ねていくというのはかなり高度なことなのだ。ヒロステのステインが感情が昂るとステインになっていて、言語化ができてスポーツマンシップのある爽やかなステインだった。いつもはダルいカーテンコールまでニコニコ拍手をしながら観ていて、だいぶ好きだった。生で観てみたいなあ! またやって欲しい。