2022.03.25

具合が悪い。寝れていないのだ。そもそも寝付けないコンディションであるこの数日、ちょうど同居人の深夜のクッキー祭りが開催されていて、日付が変わっても延々とキッチンから物音がするのが非常につらい。些細な足音や水の音で神経が冴えてしまう。同居人は朝も早いことが多いので明け方にまた簡単に目を覚ます。睡眠時間を削っても平気な人は勝手に元気にやっていればいいが、巻き込まれる側はたまったものではないな、とうらめしい。ここ最近は日中なかなか忙しく、あまり寝込んでもいられないので夜眠れないのはそのまま日々の生命活動に直結する。今日は流石に昼の一時間を寝て過ごしたが、余計に具合が悪くなった。めそめそした気持ち。過去にいただいた本の感想などを読み返して自分を奮い立たせる。いまの自分は最低だが、かつてはわりあいいい人間だったっぽいし、いいい、大丈夫、まだ巻き返せる。すがるような思い。眠い。眠くて吐きそう。

僕がげっそりしているのを見て、前髪が伸びると頭が痛くなる奥さんは、前髪切ってあげるよ、と僕の前髪を切った。切りすぎだった。変な髪型になって、鏡を見るたび、変なの、と思うようになった。これも僕が元気がないのが悪い。ダメージジーンズをよかれと思ってりんごのアップリケで補修されてしまったような気持ち。僕が悪いんだ、ぜんぶ。

仕事を早めに切り上げて、奥さんと散歩に出かける。スーパーで買い物をして、新しくできたというお店の様子を眺める。夜は過ごしやすい気候で歩くと気持ちがいい。気持ちは挫けっぱなしだが、すこしだけましな心持ちだ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。