行き詰まっていた。
日記の停滞感を打破するためにふと思いついたのだ。
実話怪談風に書いてみるのはどうだろう。
当初はいい思いつきのように感じたが、そもそも実話怪談は文体のそれらしさではなく、語られる内容ありきのものであって、表面上まねをしようとしたところでどうにかなるものではない。
そんなこと、書く前からわかっていたんだけどな。
そう自嘲気味に部屋をうろついて、怪異は見つからなかったが読みたい本は見つかった。
『狙われた身体 病いと妖怪とジェンダー』を引き抜いて、読み出す。
これが、とても面白そうな本だった。
病という「見えない敵」を可視化する方法。形のないものにヒトガタをあてがうこと──擬人化は、近世以来の技術である。ヒトガタを与えられた不可視のナニカは、あの手この手で人間の体内へとその身を滑り込ませる。
妖怪・悪霊に関連する伝承のある身体部位を図に示してみると(図2−1)、体のほぼすべては妖怪に狙われる部位といってよいほど、事例は全身に及んでいる。(…)
安井眞奈美『狙われた身体 病いと妖怪とジェンダー』(平凡社) p.60
妖怪は指先から、背中から、毛穴という毛穴から入り込んでくる。妖怪は気を滞らせ、体液=血の運行を妨げる。面白いのは、妖怪の侵入経路はそのまま鍼灸のツボと対応関係があるようにも見えることだ。
適切なツボを押すことで、体内に忍び込んだ妖怪は再び体外へと抜けていく。
悪霊に取り憑かれたときに刺激する十三のツボ。それを中国では「十三鬼穴」と呼ぶらしい。これらのツボは、現在では精神疾患のツボとして解釈されているとのことだ。
