2022.08.05

今日はコーヒーを飲みながらメールを読みながら亀の水槽を洗ったり、『邪神ちゃんドロップキック』を見ながらハンドスピナーを回しながらメルマガを書いたり、『ウィリーズ・ワンダーランド』を観ながらダンベルトレーニングをしたり、『ペーパーガールズ』を見ながらFLIKCUBE を放りつつ仕事を進めたり、『ファンダムエコノミー入門』を読みながらTSU-BO GYUTTO をにぎにぎしながらハンドスピナーを回したり、『ペーパーガールズ』を見ながらスマブラの練習をしようとして流石に無理だったりと、とにかくあっちこっちに気持ちがいって、しかしどれにも夢中になれず、なんだかずっとそわそわそわそわと落ち着かなかった。八兎くらい追って手元に残ったのはほこりみたいな毛玉がひとつ。そんな一日だ。

呆然としていると、でも、筋肉はついたでしょ、と奥さんは優しい。

『ウィリーズ・ワンダーランド』は今日みたいな日にぴったりの映画で、とにかく内容がない。ひたすら強いニコラス・ケイジが天丼のように敵を倒していくその展開は、アクションの撮り方の惜しさも相まってかなり単調なのだが、その単調さがかえっていい。ニコラス・ケイジをただ鑑賞する九〇分で、賑やかしのキッズが余計なほどだ。僕はニコラス・ケイジ濃度のなるべく高い退屈に浸っていたかった。そんな気持ちにされる楽しいニコラス・ケイジだった。これは虚無なとき何度も観返しそう。なんならもういま観たい。

『ペーパーガールズ』は面白いのだがいまいち乗り切れず、どうしても名作『フィアー・ストリート』シリーズと比較してしまうが、そんなに共通点もない。子供の頃に思い描いていたのとは違う大人のありようというビターさも、いまいち大人の側の描き方が半端で、リアリティがあるところとないところのムラが激しい。でも、そういう雑さも含めて、こういう類型的なジュブナイルものでこれまで「少年」が独占してきた乱暴さだったり狡さだったり大したことなさを全部「少女」でやる、という子供たちの描き方は好み。生理をきっかけに連帯、みたいな描かれ方がしないのがよかった。四人を隔てるのはなにより育ちの違いである、というところも。なんだかんだでシーズンは通して観ちゃいそうだ。

観たものや読んだことさえあれば、実感としてうまく食べれなかったと思っているものでもいつの間にか書けてしまうし、書いているうちに腹に収まっている。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。