2022.11.12

今朝は早起きなので緊張した。浅草の川沿いを歩くたびに、ここから見るスカイツリーは嫌いではないな、と思う。それはいつか観た中村座の公演を思い出すからでもあるだろう。借景のために舞台裏の扉が隅田川に向けて開かれると、そこには満開の桜がある。ちょうどそこを遊覧船が通りかかり、船の上の人たちも華やぐ。いま思い返しても夢のような光景だ。

人のポッドキャストにお呼ばれして、いち文フリ好きとして楽しくおしゃべり。ホストの山本さんとしっかりお話しするのは初めてで、他のゲストの方々も初対面。僕も含めみんな感じがいいので緊張することもなくのびのびと話せた。小一時間程度の予定が二時間は話していたのではないか。本の話は楽しいな、無限にできてしまう。ある箇所を録り直すことになって、そこにいる人たちがそれぞれの真剣さで突破口を探っている時間がとてもよかった。煮え切らなさや所在の見当たらなさを素直に認めつつ、それでも言葉を探そうとする姿勢を共有できるのは、じっさいに同じ空間に集まることでしかできないことかもしれない。皆さんのお話もたいへん面白く、また聴き直したい、と思うのだけど、ポッドキャストだから聴き直せるのだ。録音してのおしゃべりというのはたいへんよいものだ。収録後は事務所前の公園でふざけた写真を撮ってもらう。ちかくのカオマンガイ屋さんを教えてもらってみんなでお昼。タレの種類が三種類あって、それぞれ違うのを注文して分け合う。とっても美味しい。『フルメタル・ジャケット』みたいな学校の動画に慄く。精神的にヤバいときは独り言を超えて思ったことを何でも歌にしてしまうという話に前のめりに同調してもらえて面白かった。すごく楽しかった、という満足感があり、こういう感覚は久しぶりかもしれないな、と思う。初めて会う人と、いい時間を過ごせたという手応えはなんだか励まされる感じがあるというか、自分に対する信頼がすこしだけ補強される。またこの人たちとお話がしたいなあ、という気持ちもなんだか嬉しいものだった。

そのまま浅草で奥さんと合流。すっごく楽しかった! と報告する。今日はこのままへべれけになる日のつもりで、しかし浅草は思った以上に人が多かったので仲御徒町まで歩くことにする。原価酒蔵で日本酒をくいくいっとやりながらおしゃべり。自分たちは辛口が苦手だと思っていたけれど、淡麗が好きなのかもしれない。この店でいうと濃醇辛口というのが苦手であって、淡麗辛口はむしろ好き。そして濃醇甘口は一口目は美味しいが続けて飲むのは少しつらい。二時間たのしく飲んで、外に出るともう日が傾いている。酔った、では歌おう、ということで、まねきねこで元気よく歌を歌った。二人で二時間だとほんのり物足りないということが知れた。それから上野のバーで高級ケーキみたいな味のカクテルを飲んで、〆はお蕎麦。酔い覚ましに三駅くらい歩いて、ずっとなにかしらしゃべっていた。

大変よく遊んだ一日。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。