2023.01.08

今日はお出かけ前に録音。前半僕が上滑りして奥さんが空返事すらしなくなったのでもうダメかと思ったが、なんだかんだで二時間近く喋っていた。奥さんは最後まで首を傾げていて、もう少しなんとかなった気がする、とモヤモヤしていたから、長いだけでダメな回かもしれない。でも僕はしゃべりながら初めて言語に象られたという手応えを得たような、そうでもなかったような印象がある。どうだろう、そうでもないかもしれない。二人ともぽやぽやしているのはよくわかった。

上野公園の無料の謎解きで遊んだ。東京国立博物館で開催されているイベントの告知用に作られたもので、チラシはもう配布が終わっているようで、自分たちでPDF から印刷できるのだが、横着して画面を見ながらさっそく遊び始めてしまう。架空の探偵にLINE でメッセージを送って手がかりをやりとりしていくのだが、途中まで謎を解いて浮かび上がったヒントに従って紙を折る段にさしかかる。それでも往生際悪く、画面上を指差しながら二人で、多分紙をこう折ったらこの線がここにくるんじゃないか、などと推測してみせて、この時間がいちばん頭を使ったかもしれない。けっきょく諦めて近くのコンビニでプリントしたのだが、僕たちの推測はちゃんと当たっていて、そのくせ二次元から三次元の処理を引き出すところに頭を使いすぎて単純なひらめきに至れなかっただけだった。プリントしたけど、もう紙の出番おしまいかもね、どうせ無料だし、などと舐めていたらそこからの展開が鮮やかだった。思ったよりも充実していたし、カタルシスもあってたいへん楽しかった。謎解きって面白いねえ! と僕はしきりに感心して、椿屋珈琲で一息ついてから帰った。

最寄りの本屋に寄って、二人でふだん見ない児童書のコーナーや漫画雑誌のコーナーをじっくり検分する遊びをした。ずいぶん面白いものだった。キラキライケイケの装丁でエグい怪談漫画のアンソロジーがあったり、やたら動物に異種格闘技をけしかける本があったりする。「在来種 VS 外来種」という立て付けがあり、こういうところからナショナリズムというのは植え付けられるのかな、と思う。児童向け読み物シリーズは怪談がいくつもあって、しかも見知った実話怪談作家の名前が目立つ。こういうところで現役のちゃんとした人たちが容赦なく書いているのはすごくいい。漫画雑誌コーナーにはいまもまだこんなのあるんだ、というような、ハーレクイン文庫みたいな雑誌がいくつかあって、ぜんぶ「禁断」を惹句に使っていて、こういう人たちのエロはとにかく禁断らしい。それから漫画コーナーで入間くんが30巻まで出ていること、アニメはおそらく15巻くらいまでだろうことを確認したり、FGO の漫画の表紙がネロちゃまではしゃいだり、ジャンプコミックの多くを知っていることを自慢したりした。ずいぶんと楽しかったのでまたやりたい。

ネットプリントの期日でもあった。今回もいくらか構ってもらえて嬉しい。毎回気がついたら日付を超えていて、今回もお風呂を出たらもう手遅れだ。どれだけの人がプリントしてくれたのか確認しそびれる。どちらにせよ数ではなく、プリントしたことがわかるようにツイートしてくれる人たちしか僕は具体的に喜べなくて、毎回その人たちの顔やアイコンを思い描きながら作っている。ネットプリントとメールマガジン──結局ニュースレターよりこっちの方がしっくりくる──は、日記や録音よりも明確に届く先の相手を想定して書いていて、反応を返してもらえると、なんとなく近しく思えてしまう。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。