2023.03.07

佐川急便の配送ステータスは「集荷」→「輸送中」→「配達中」と遷移する。「輸送中」とは中継する各拠点までの輸送を指し、近くの配達所に着荷してから各所への配達が始まる。昨日の昼の時点で「輸送中」になっていたから当然きょう届くと思い込んで在宅に切り替えていたのに、いつまで経っても「輸送中」から「配達中」に切り替わらなくてやきもきした。佐川にはいつもモヤモヤさせられるというか、モヤモヤするときそれは佐川だった。

それでもう気にしないことにして労働。2018年の『ハロウィン』を観て、旧作を踏まえたうえで今様に語りなおされており面白かった。格好いいおばあちゃんが出てくるとそれだけでいい映画になる。夕方ごろ椅子に座ったまま気絶する様に寝て、起きると体がかっとして怠さがすごい。頭が重くて、喉がひりつく。脱水だった。慌ててコップ一杯水を飲む。『臥虎蔵龍』を観る。なんで邦題『グリーン・デスティニー』なんだろう。変だと思う。チャン・ツィイーを見ると『初恋のきた道』をボロクソに貶すおすぎを思い出す。「オスギハイクラ」、動画を探してもあまり出てこないし、あのころのテレビ番組っていまいちばん掘り出しにくいんじゃなかろうか。たしか「こういうキモい映画を喜ぶのはもう夢も希望もないようなおっさんだけで、そういうおっさんが、ああ俺にもこういう青春があったなあ、なんて気持ちよくなるための映画なんだけど、あんたらにそんな青春最初からなかったから!」みたいな言いようで、酷すぎてめちゃくちゃ面白かった記憶がある。『初恋のきた道』は観たことない。

待っていたサンプルは17時前にようやく「配達中」になり、19時前には届いた。そわそわ開封。さっそく点検し、あれこれと修正点をメモする。本文の修正はそのまま組版データに直接打ち込んでいってしまう。『臥虎蔵龍』はだから終盤はほとんど集中が切れてしまっていたけれど、僕はどうも顔のアップの多い会話シーンの単調さが合わず、話も少年漫画のようでありつつも結局しみったれていたので最後までうまく楽しめなかった。僕なら、そうね、600円かなあ。サンプルの写真を撮る。iPhoneじゃガビガビで、GR を使う。

『〈世界史〉の哲学 近世篇』は王の二つの身体の謎を解きにかかる。このシリーズは本当に面白くて、ずっと読んでいられる。そろそろ完結するのだろうか。あと一、二年、そのころまでにはシリーズをぜんぶ読み通していそうだ。

しかし、サンプルの刷り上がりを待っているから具合が悪いのかと思っていたけれど、安心した今になってもまだお腹から胸にかけて中身が欠落してしまったようなモヤモヤと、なにか大事なことを忘れていていまも取り返しがつかないことが進行しているような焦りは晴れないままで、春なんだなあ、と思う。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。