2023.04.17

気圧アゲアゲのなかコーヒー飲んだら動悸がすごい。仕事がどうにもできないので散歩に出る。ポイエティークRADIO を聴く。僕にとっていちばん面白いポッドキャストはポイエティークRADIOなんだよな。ポッドキャストは声のZINE だから、あんまり造本にお金がかかってたり、細部に凝っていてもなんだか嘘くさい。コピー紙折ってホチキス留めしただけみたいな、このくらいの塩梅がいい。制作資金が数百円から数千円でも始められるのが自主制作で、有名人や企業の参入によってクオリティが立派なものになっていくというのは必ずしも楽しいことではない。「立派なものは作れない」で挫けてしまうのではなく、「そこがいいんじゃない!」と読み替えるみうらじゅんマインドが大事。大事というか、僕にとってはそれがとても重要なことなのだ。ある程度までのクオリティであれば個人でも簡便に追求できてしまうからこそ、雑さをどのようにどのくらい許容するかという塩梅こそが味を決める。そういう味をちゃんとあじわえるような感覚を養うこと。僕はそこに力を注ぎたい。

『差異と重複』の在庫を受け取ってから送り出すまでのこの半月、ほとんど本が読めなかった。詩歌と実話怪談をちびちび読むことはできて、こうやって合間にすこしでも差し挟めるものがあるというのはとても助かる。軽さや簡単さは、ばかにしていいものではない。その軽さや簡単さは、読み手に先んじて肩代わりされているものがあまりにも多くのものによって実現している。これは本に限らない話だろう。グミと実話怪談は似てる。たまにすごく食べちゃう。しかもいっときに集中して食べまくって、しばらく置いておくのも同じ。鈴木捧『花筐』を読み終える。半年以上ちびちびやっていたのではないか。山での怪異の神秘的な遠さと、山から降りた時の凶悪さのギャップが楽しい一冊。恐怖の置き所も出来事そのものにあったり、語り手自身にあったりと多彩だ。

動悸は収まったが嫌な感じの胸焼けというのか、胃のあたりのふわふわした感覚が抜けず苦労する。後頭部にゆるい痛みもある。あと右の足の甲がさっきからずっと痒い。絶不調である。ランチは今どきカレーに別皿で千切りキャベツ、とんかつ、コロッケ、さらには豚汁までついて850円というのをいただいて、おいしかったがこれがいけなかったかもしれない。厨房のおっちゃんは弁当の手配もあって忙しく、のんびり笑顔でホールを担うおそらく奥さんに甘えるように細かいことで難癖をつけ、泣き言をこぼす。学生時代にアルバイトしていた家族経営の蕎麦屋の風景を思い出す。なんであれ、仕事中に機嫌や感じがいいわけないのだ。

呼吸も浅い。春は気を抜くと具合が悪くなるから、ばかみたいに用事に追われているくらいが調度いいのだろう。すこし余裕ができるとこれだ。具合が悪すぎて、帰ったらすぐ寝よう、さいあく夕飯はいらない、と思う。電車で本を読めず、どうせ画面がしょぼくてiPhoneで充分かつ中断もしやすそうなやつ、と完全に舐めた態度で『Searching』を観始めたら面白くて帰宅してからもハラハラ観てしまって、夕飯で中断があったがもりもり食べて、すぐに再開。半分くらいのところから横から眺めていた奥さんもすっかり前のめり。夢中で画面を追いかけて、はぁー、面白かったねえ!

日中のつらさが嘘のように元気が出てきた。結局おもしろいものを摂取したり、奥さんの顔を見ると大丈夫になってしまう。今日こそバタンキューで寝倒すかと思ったのに。奥さんから見るとたぶん僕はきょうずっとごきげんなのかもしれなくて、昼間の具合の悪さは嘘のようなのかもしれない。あんなにしんどかったのに、なんだか納得できない。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。