2023.07.09

午前中はほとんど寝ていた。きょうは奥さんが妙に早起きで、僕はいちどコップいっぱいの水をもらって感謝を述べつつ朝のあいさつだけして、もうちょっと寝るねと枕に頭を沈ませたのが八時前。起き出してお風呂に入ったのはかろうじて午前中だったかもしれないがゆっくり汗をかいているあいだに正午を回ったはずだった。さっぱりしてトーストを一枚食べてようやく酒が抜けてきた感じがある。このあいだに奥さんはハイラルの地下の根っこをどんどん光らせていたらしい。

夜はとびきりおいしいピザを食べに東武練馬まで出る予定で、しかしそこは遠い。中継地点である池袋あたりでデートでもしておかないと乗り換えの面倒臭さにいやになっちゃうおそれがあった。そこで近所の回転寿司で遅めのランチをとりつつお出かけと洒落込むことにした。二人暮らしになって自炊が楽しくなってきたからジュンク堂でレシピ本を眺める遊びをしようということになって天気雨が降り出すなかびっくりガードの五差路まで早足で向かう。二階のレシピ本コーナーはたくさんの本があって楽しいが途方に暮れる。インターネットで知り合った読書界隈に絶大な信頼を寄せられているウー・ウェンに僕も私淑し始めているので、ついに『料理の意味とその手立て』を購入。もう一冊は稲田さんの『ミニマル料理』と迷ったのだがけっきょくウー・ウェンの『煮ものあえもの』となった。名作と名高い『北京小麦粉料理』も買うか迷ったのだけれど、こういうのは知識よりも気力なのではないかと奥さんにいさめられいったん見送る。近いうちに買ってしまう気はしている。家庭料理のコーナーにあるものだと思い込んでいたらなかなか見つからず、中華料理の棚に個人名でコーナーが作られており、わかるようなわからないような気持ちになった。レシピ本コーナーに『小林カツ代と栗原はるみ』が置いてあったのはよかった。『「家庭料理」という戦場』も並べてほしい。

本屋に行ったらすっかり元気。奥さんは本に囲まれるとすこし疲れてしまう。芝生の公園で休もうとしてカフェは満席で、西武まで戻って服を見たり、ロフトでスキンケア用品を買ったりした。泡立ての概念を塗り替えるという洗顔ネットや、化粧水に乳液、背中専用の石鹸も買う。ずっと肌は問題を抱えているから、これを機にちゃんと労ってあげたい。すこしくたびれて、芝生の公園に引き返して鳩と合席しながら冷たい飲み物をいただく。ファミマのPBをチェックするのがさいきん楽しいという話をして、荷物も嵩んできたのでファミマでエコバッグを探すことにした。半ズボンが人気らしくてどこに行ってもないんだよ、と話しながらエコバッグもなかなかなくて、でも池袋はやたらにファミマがあって、公園から駅までに四軒もある。三軒目でエコバッグは買えて、やっぱり半ズボンはなかった。こうなってくると欲しくなってくる。今後も僕はファミマチェックをするだろうし、見つけたら買ってしまうのだろうが、そこまで欲しいのかはよくわからない。人は他者の欲望を欲望するものだから。

東武練馬は久しぶり。今夜は奥さんの父の定年退職祝い。大いに飲んで食べる。ほどよく酔っ払って帰る。電車のなかではきょう一日持ち歩きながら開いていなかったペンギン本をようやく読んで、やっぱり面白い。すこし重量のある本で、これのせいかはわからないがきょうはずっと腰猫背ぎみでなんとなく腰がしんどかった。骨盤を立てるように意識して、骨盤があたかも足であるかのように歩くんだよ、と奥さんに教わるが変に意識した結果ペンギンのような歩行になっていた気がしてならない。腰はいまも痛い。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。