2023.07.13

目が覚めて喉の痛みに嫌な予感がした。のど飴をばかすか舐める。午前のうちに買い出しを済ませてしまって、あとは身を労るように、ソファに身を横たえて本を読んでいた。『異常論文』をいくつかと、『ディディの傘』の二本目の短編。それでもう暗くなっていた。

ウー・ウェンの酢鶏を仕上げて、あとはパセリを刻むだけというところで、あれ、いま包丁持つの怖いなと気がつく。ふらついてる。奥さんにバトンタッチして少し寝る。測ってみると37度くらいで、まあ高いかな、という具合。天井のあたりに黒い塊が飛来している幻覚をみた。カサカサと乾いたような音や、パチリ、と高い音も聞こえた気がした。奥さんが最後の工程を引き受けてくれた夕飯はもりもり食べて、食卓にカナブンがいて驚いた。どこから入ってきたのだろう。すぐに寝る。

23時20分くらいにあまりのからだの熱さに起きてしまって38.5度。これは本格的に風邪だ。水が飲みたいが、奥さんの部屋まで声が届かない。iPhoneで連絡を試みるが無理そうで、ふらふら起き出して、ついでにトイレにも行っておく。あつい。ベッドに引き返して、眠れない。お尻のえくぼみたいな部分の筋がしくしく痛む。せっかく縦になったのなら氷枕を出してくればよかった。横臥したままひとりで耐えている、この心細さはずいぶん久しぶりな気がする。日記を公開しだしてから、病欠ってあったんだっけ。皆勤賞の呪い。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。