2023.09.22

労働の隙間時間を見つけては『ベイブ論』を書いている。きょうは四千字くらい。四万字目標を考えればなかなか厳しいペースだが、書きたいことを書くだけであれば二万字強で行けるような気もする。とはいえ今回はいつもの圧縮するような書き方ではなく、たっぷり冗長性をもたせるということをやってみたくて、そのためには四万字という目安めがけて贅肉をつけていく作業が必要だろうとは思う。 きのう映画を見ながらメモのように走り書きした一万字をいつものように磨いていったら五千字くらいまで減るのだが、今回は手を入れていっただけでなぜか四千字増えた。そう、きょうの四千字はこの推敲で嵩が増したぶんでしかなくて、この調子であれば書きたいことを書くだけでもあっさり四万字はいくのではないかとも油断しかけてしまうが、まだ書けていないものは書けていないのでわからない。ソリッドなエッセンスではなく、デコラティブなだぶつきで読ませる。できるだろうか。作業中はCoaltar Of The Deepers を聴いていた。奥さんが新宿ゲバルトのライブに行くようでその対バン相手だそうだが、これまでまったく知らず聴いていなかったのが不思議なくらい好きで、BUCK-TICK 以降、思春期に聴き込んでいたかもしれない名盤とおじさんになってから新鮮に出会い、遡及的にありえたかもしれない一〇代の理想像が書き換えられていくようなことをずっとしているような気がする。Twitterのフォロワー内で検索してみるとやっぱり皆聴いていたようで、本も音楽も僕は驚くほど無知だというか、僕だけではなく人は全般的にかなり変なところで基本的なことを知らないままで済ませていたり、お約束を踏襲していなかったりするから面白い。けっきょく七千字くらい書いたから優秀。

ずっと憧れている眼鏡の再入荷を知り、退勤後にお店に試着に出かけてみる。似合わないだろうなと考えながら。僕は眼鏡はつねに似合うかに合わないかではなく、かけたいかどうかだ。気合で似合わせていくのだ。かけてりゃ似合っていくものだから。そう覚悟していたのに一発で似合っちゃうのだから買うっきゃない。うきうき気分だ。ゴールデン街で飲みながら奥さんを待つつもりが、江戸のご禁制を経て復活した明治期のかるたの歴史についての与太話が面白すぎてむしろお待たせしてしまった。帰宅してコンビニのラーメンとプリン。お腹痛くなっちゃった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。