『ベイブ論』は27,000字弱まで進む。内容に要請される文字数は30,000文字で足りる気もしてきた。焦らず整えながら膨らませていく。ここまでの感じだとそれで35,000文字はいくだろうし、それであればおそらく75ページくらい、余裕をもってレイアウトしたら80ページにはなってちょうどよい形に収まるのではないだろうか。しかし今回の本は『雑談・オブ・ザ・デッド』以上に売れなさそうというか、書く必然性も読まれて欲しい気持ちも強いがセールスポイントを表現しづらい本でもあり、完成前から営業担当の柿内が頭を抱えている。制作部門の柿内は大はしゃぎです。本作るたびに新鮮に「こんなん誰も求めてないだろ」と思うからすごいと思う。どうせ勝手に作るのだから、ZINE はマーケットインではいけないとすら思う。誰にも求められていないものをうきうき作ってキラキラした目で押し付けていく。その狂気こそが肝腎である。
退勤後、西荻窪に走る。FALLに展示を見に行って、在廊中のマスクさんにお会いしたかったから。枯れ野原の狐さんもいらっしゃって、嬉しいはじめましてだ。『山學奇譚』にお二人のサインを書いていただく。僕も書かせてもらう。愛しのかぼす館長を象ったブローチを買う。一緒に買ったマシバッグにつけるつもり。レジ前で三品さんとおしゃべりしていたら、柿内さんですか、と声をかけてくださった方がいて、オムラヂだけでなく僕の本や録音もチェックしてくださっているということで大喜びした。柿内業のときは基本それ用の眼鏡とキャップで自分を飾るというか、その装束が柿内にとっての仮面ライダーベルトみたいなものなので、すっぴんで柿内をやるとすこし申し訳ないような気持ちになるというと妙だが、変身前のぼやぼやした格好で怪獣に立ち向かうような頼りない気持ちになってしまうようになった。マスクさんにお誘いいただきもともと予定されていたであろうお夕食にお邪魔することに。今野書店のすぐそばの居酒屋で、かなりいい感じのお店。すいすいお酒を飲みながらみなさんの話を楽しく聞いたり、しゃあしゃあ喋ったりして家に帰る。
奥さんが梨のクランブルを作っていて、夜のお茶会。すこし温めた本体に、アイスまで載っけちゃう最高のデザート。にこにこしながら食べ、天才の所業、すばらしい、どれだけ褒めても褒め足りない、そう奥さんに感謝を伝え、ごきげんに歌いながら日記を書き、真夜中だった。