2023.10.04

ポケモンスリープはよく続いている。ほとんど毎日欠かさず、二カ月とか三カ月とかだろうか。あたらしいゲームだと思っていても案外すぐに時間が経っている。FGO なんかもうすぐ連続ログイン日数が1150日を超える。朝昼晩とカビゴンに食べさせて太らせるというのがいい。僕は誰かを食べさせて大きくするのが好きらしい。一時期、まりもを太らせるアプリをやっていたが、こちらはいつの間にかやめてしまった。教えてくれた人のまりもは長年だいじに育てられた結果、ビルくらいの巨大さまで膨れ上がっていて、異様すぎて面白かった。カビゴンはそういうインフレーションに至らず、一週間で別の個体に移るので、適度に愛着が切断されるのもちょうどいいのだと思う。

昨晩、Notion 上で書いていた日記、20年の七夕以降の日記をすべてデータベースに移行した。思ったよりもスムースにできて、これからの楽しみはこれを読み返しては仮タグをざっとつけていくという遊びで、これでこの三年ほどの自分の関心やキーワードが雑多なタグとして外在化されて、さらにこれらを整理整頓することでこれからの僕の考えた最強のノートの祖型ができあがるという寸法。キーワードは最終的に多くても12個くらいまでには収めたくて、それで12冊書けるくらいのところまで持っていきたい。21年から今年までは日記本ともう一冊という形で年に二冊のZINE を出してこれたが、来年からひとまず日記本は封印するとなれば、書下ろしで二冊書かなければこのペースは守れないことになる。今年は増補版とはいえ全面改定を施した『会社員の哲学』に加え、『『ベイブ』論』が出せそうだからできなくはないことだ。もちろん、やらなくたっていいのだが、制作の手を止めるのはなんとなく面白くないから、ざっくりとした目標はもっておいてもいいかもしれない。勝手に作っているものだからこそクオリティに拘泥わるというのもわからなくはないが、僕は制作は何より量だと思う。そして量を可能にするのは速さだ。ひとつのものに完璧や網羅性を求めずに、次で補えばいいやという気構えを持つためにも、並走していくつかの企画を試しておくほうがよい気がしている。一個のことに全身全霊を傾けるだとか、納得のいくまで追求するために寡作であることだとか、格好いいけれどその格好よさは僕にはないので、安定して量産できることがいちばん面白い。依頼原稿なんかも、納期よりなるべく前倒しで納めるし、その時点で完成しているからゲラの段階で直すというのも最小限に抑えたいと思う。これはまあ、依頼が散発的で少ないからでもある。この夏はいくらかの締切が重なるようなこともあったしすこし大変だったような気もするけれど、まだまだやれるなという気分のほうが強かった。用事はもうすこし多くていい。できれば安定したペースで多いとメリハリがあっていい。たまにあって、大半はぬるっとしていると、リズムが作れず毎回はりきることになるから疲れやすいだろう。だからこそZINE を量産するという発想に至ったわけで、依頼がじゃんじゃか来たらペースを落とせばいい。制作意欲と計画の調整弁としてZINE を活用するという面もありつつ、しかしやはり自分の主な活動は勝手にやることで確保していったほうがいい、安易にここを他人のニーズに合わせていくとおかしなことになるというのも普通に思う。

日記でもホニャララ論でもない本、つまりはエッセイ本を作ればいいのでは、とRyotaさんに言ってもらって、これはたしかにそうなのだが、既刊の日記もホニャララ論も言ってしまえばエッセイではあり、これを別のコンセプトなり体裁で装っているのであって、すっぴんでエッセイを出すというのはやはりどこか勇気がいることなのかもしれない。ジャンルに寄りかからない雑文に、いらぬ警戒心や先入観をもたせないまま読んでもらうための方便としては、これ以上ないほどに便利であるはずなのだけれど。

カーディガンを羽織るくらいに肌寒く、会社の昼休みに銭湯に寄った。気分がよかった。雨が何度も降り出して、ものすごい眠気がわれわれを襲った。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。