各文芸誌掲載の短編と長編を読み返す日。一度目ではピンと来なかったものでも二巡すると面白がりかたは見えてきたりする。特に短いものはただ通読するだけでは付き合う時間も乏しいのでこちらの楽しむ構えが出来上がる前に終わってしまうことも多く、そうなると繰り返すほかない。しかし仕事でなければそんなことせずさっさと次にいってしまうだろうから、こうして無理やり取り掛からざるをえない状況に自分を追い込んでいくのは別の楽しみを覚えていくようでありがたくもある。しかしまだかったるさを吹き飛ばすほどの面白さには出会えていない感覚がある。読書というのはどうにもこちらから働きかけなければ楽しくない行為で、元気がいる。いまの僕はあまり元気ではない。健康になること。それが楽しい読書の前提条件で、元気がないとなーんにも楽しくないんだなこれが。じっさいお風呂が沸いたことを示す音声だったり、インターホンのチャイムだったり、目覚ましのアラームを聞き取れなかったりするのは結構な不便だし、奥さんとの会話や日常の些事についても三手くらい先読みしてあれこれできていたのが一手ずつ記憶喪失に陥るような感じがあっていちいち躓く。改めて考えてみるとこれってだいぶまずい状態なんじゃないかと思われるのだが、どうしたらいいものかわからない。本も読めず、日常生活もやっとのことで、とにかく頭の衰えが加速している感じがあってだいぶ怖い。
夜は麻婆豆腐。おいしくできた。食後は奥さんとジェンガで遊んで、なにか対戦できるものを、ということでマジック・ザ・ギャザリングのパソコンでできるやつを試してみようとなってダウンロードする。チュートリアルで日付が変わってしまったので、あとは明日以降のお楽しみ。触ってみた感じ、ふたりで熱中した『Inscription』はだいぶこのカードゲームの古典を下敷きにしているんだなとわかる。初めてのプレイヤーへの接待でたくさんのパックをもらえたのだが、この大量のカードでデッキを組まないといけないと思うと荷が重い。勝手に構築されたデッキで奥さんとよくわからないまま戦ってみたいのだけど、まだもうすこしチュートリアルで勉強しないといけないみたいだ。日記を書いているあいだ奥さんはすでに先に進んでいて、なるほどね、ここらへんは『Slay the Spire』っぽさもあるね、というかほとんどのカードゲームの原点がこれなんだね、たしかに面白い気がするわ、などと頷いている。真剣にゲームをするときの奥さんは興味津々の猫のように黒目がまんまるくきらきら光る。
