『ポスト・サブカル焼け跡派』読了の興奮醒めやらないまま録音。やたら喋った。すごくいい本だった。表紙の軽さに似合わず硬派で、これまで触れてきたサブカル語りでもっとも面白い、というか、はじめて面白がることができた。この本を読むことは、サブカルチャーをカウンターカルチャーと同一視しようとして前者の非政治性に気持ち悪さを感じつつもなんとなく没頭してしまった学生時代を反省的に振り返る時間でもあった。当時の僕は10年単位の歴史を軽視していたというか、そこに歴史的な視点を導入するという発想すらなかった、でもそれこそが違和感に見晴らしをもたらす鍵だったのだ。現代史に幻滅だけでなく知的興奮をもたらすというのはなかなか稀有なことだと思う。
午後から下北沢に出て、ユニクロや雑貨屋を物色していく。奥さんの指がほっそりしてきて指輪がゆるいので、おさえの細身のリングを買う。僕も血まみれ肉切包丁のイヤリングを衝動買い。ぶらぶらと散歩しつつ適温という駅前のカフェで温かい飲み物をもらって過ごす。梅棒『花婿は名探偵-THE FINAL-』を本多劇場で。すっごく楽しかった。客層も老若男女といってよい幅広さで、終演後、見た目からしてばらばらの人たちが、面白かったねえ! というほわっとした気分で一致して温かい雰囲気が立ち上る、その瞬間になにより嬉しい気持ちになった。誰もが楽しめる最大公約数に向けて興行するというエンターテイメントの困難は、年をとればとるほど身に染みる。見ず知らずの誰かと共有できる話題というのはほんとうに少ないのだ。巧みにお茶の間的集合知を参照し、説明コストを削ぎ落しながら、初見の観客にも次の展開を予想させ多くの場合その通りになり、たまに小さな外しと驚きがある、というプロット運びの気持ちよさは、そのままミステリーの仕立てとも合致している。セリフなしで既成の音楽に合わせた踊りだけでほとんどの状況を説明していくのだが、そんな制約のなかできちんと伏線の準備やミスリードまで機能させてしまうのだからすごい。お約束な展開しかないからこそ、クライマックスでは、待ってました!とばかりに思わず拍手してしまう嬉しさが募る。それもすべてはダンスの技術の高さによって裏打ちされており、とにかく目がずっと楽しい。
大満足で帰宅。奥さんがきのう仕込んでくれていた茄子入りシェパードパイを仕上げているあいだにコンソメスープを準備して、フォカッチャに焼き目をつけてディナー。発泡ワインも一本あける。デザートはカヌレとアイス。ハッピーホリデー。いよいよ年末って感じだ。