2024.01.14

朝は昨日の奥さんが買ってきてくれたパンを食べる。ついにコーヒーのドリップバッグも切らしていて、パンなのにコーヒーを飲まないということをした。この一日、コーヒーが飲みたくなるタイミングは何度も訪れたのだが、結局飲みそびれた。徐々にコーヒーとの距離が空いていく。アルフォートのときとはちがい、ふと心が離れたわけではない。いまでも無性に飲みたいが、我慢できないほどではない。日用品ではなく、たまの贅沢でいい。がばがば飲むのでなく、たまにいいやつを飲む、そのくらいが調度いい付き合い方。そのような気分になっている。節約のつもりはないというか、コーヒー豆を月に一度か二度買うというぶんのお金は本に消えているから節約できていないのだが、でもやっぱり節約なのかもしれない。引っ越しに関わる支出の規模が読めないから、漫然と節制生活に慣れておこうとしている気もする。あるいは、生活環境の変化へのストレスに備え、小さなところから変えてみて耐性をつけようとでもいうのか。

新宿に出て、ショールームを見て回る。初めに見た西新宿のビルまるごとショールームみたいなところは人の入りもいまいちで、椅子や机ばかりで、これじゃなかったかもな、という気持ちになる。家の可能性を前に華やぐ人々を見てそのはしゃぎを吸ったり、あるいは機能が満載されたトイレやお風呂を見て愉快がりたかったのだと知れる。床板は面白かったが、疲れてしまって吟味できなかった。都庁を突っ切った先の舞台セットのようなロイヤルホストで遅めのお昼。かるめにマッシュポテトとシチューを食べて、ビールやワインも飲んじゃう。お目当ては紅玉林檎のブリュレとパフェだった。二種を分けっこしながら食べる。昨年食べてすごくおいしかったのだが、すぐに苺の季節に切り替わってしまった。今年も思い出したころには会期の間際だ。この林檎のブリュレはすごくおいしいのでいつでも食べたい。シーズナルメニューというのはじれったい。また来年。

就活ビル内のリクシルのショールームにも行く。こちらは楽しい。窓の防音性が体験できたり、宅配ボックスが開け閉めできたり、奥さんが友人といったアフタヌーンティーのお店にあった「まるでベロアのような尻触り」だという高級トイレなどを堪能する。係の人のそつないにこやかさも流石で、紙袋にどっさりカタログをもらう。室内の温度が高く、望み通り活気にあふれていたから人いきれで湿度も上々、のぼせてしまって長居はできない。外は凍てつく寒さ。この季節は、この寒暖差にくらくらする。主に室内でぼんやりしてしまう。

紀伊国屋書店で沖縄に持っていく本を見繕いたいという奥さんについていくと、カントーロヴィッチ『王の二つの身体』がちくま学芸文庫で復刊とのことで、おお、と思い購入。ちょっといいコーヒー五杯分くらいの値段。これを躊躇いなくほいっと出せるのは何故か。ついでにこれまた復刊が話題だという鬼太郎も買う。奥さんはシェイクスピアを買う。

帰宅する電車のなかでどっと疲れが来る。ペットボトルのスポドリを買ってごくごく飲む。一万歩以上歩くのは久しぶりだったかもしれない。それでもまだ時間はあったので、ポテチをつまみながら「ダンジョン飯」や「葬送のフリーレン」を見てぼんやりする。フリーレンはまだ三話だ。いつの間にか溜まっている。お風呂に入り、作り置きで簡単な夕食を済ませると『Firewatch』の二日目を遊ぶ。奥さんの横から見ているとじれったかったが、自分で操作するとてんで駄目で、すいませんでした、と思う。操作に慣れるまで、視軸も方向もさっぱりわからない。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。