2024.02.15

心を落ち着けなければ本は読めない。僕がいちばんリラックスできるのは心配事も用事もなくぞんぶんに暇なときだ。本を読むのに忙しくなって、余裕を失い、本が読めなくなると、楽しく本を読みたいからもう本を読みたくない、というナンセンスな事態に陥り、なんで!? と叫びたくなる。叫んでいる。

心配事も用事もなく、ぞんぶんに暇な時間。それだけをいつだって求めている。そういう時だけ溌剌とし、余計で楽しいことを始め、いつしかそれで忙しくなるが、そういう時こそ万難を排して暇をつくらなければ、楽しいことはできない。忙しなさのなかでいかにぽけーっと暇を持て余せるか。それが問題だ。

昨日は嬉しい気持ちでお酒を飲んで、寝て起きて、今日は外が生ぬるい。赤坂までコムロ探偵事務所の新作を観に行って、この芝居は最高に面白いというわけではないし、ものすごくよくできていると感心するわけでもないのだけど、なんだか絶妙にちょうどいいのだ。べつに全部が全部、心底震え上がるようなものでなくていいというか、無理なく気張りなく繰り返し観られるような軽さとラフさを維持するというのも大事なことだと思う。歌っていればとても楽しいし、全体として薄味で感情の起伏を無理に作ろうとしていないのもちょうどよさの理由だろう。

夕方から打ち合わせがあるのでケーキを買ってすぐ帰る。家でお茶しながら小休止。今日の打ち合わせも楽しかった。カレーライスを作って食べる。なんだか今日はあっという間だったな。少しだけ物足りないが、このくらいでいいのかもしれない。楽しかったが、なんとなく物足りない、けれどもそれくらいの方が続いていくものとしてはよい形のような気もする。これは今日の芝居の感想でもある。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。