2024.03.06

いっときの温暖さはやはり何かの間違いだったのだろう。平気で寒い日が続くがこちらとしてはいちどチラ見せされた暖かさのせいで寒さに滅法弱くなった。そもそも油断して着込まなくなったからガードが薄く、冷気をまともに食らう。天気への対処の戦術を組み立て直さねばならないのだが、連日のイベントでどうもそういう回路の切替が愚鈍だ。今月に入ってからまだ一冊も本を読んでいない、読んでいないというと嘘で読んではいるのだが通読したものはなく、かといって併読が混雑しているわけでもない、やはり読んでいる時間がずいぶん少ないというのはじっさいそうで、だから本を読んでいない気分でいる。ひとまず電子で買っていた『文学のエコロジー』を読み終えて、言及されていた『生成と消滅の精神史』が面白そうだったからこれも電子で買って、するとポイントがたくさんもらえたから『リサーチのはじめかた』と『句点。に気をつけろ』も買う。前者はLife のイベントで薦められていた本で、後者は昨日の日記に書いたような自身の喋り言葉における句点の不在について考えるためだ。

『句点。に気をつけろ』を読みながら口語がテキストじみてくることについて考えているとメールが来る。即興について考えるワークショップを「喋り」や「語り」といった切り口でやりませんかという稲垣さんからのお誘い。二つ返事で受けつつ、句点に気をつけるようなワークになるだろうな、と思いざっくりした時間割のイメージを伝えると、返信早すぎるのと内容がなぜかもうできてて笑いました、と返ってくる。僕はメールが速い。気づいたときに返さないと忘れてしまうからだ。だからすぐに返事がないときはまだ読んでいないか、あるいは忘れているかだ。すぐに応答できないようなメールというのはそもそも次のタスクが明確でないか、どれだけ時間をかけても応えられないようなものであるが、だいたいのメールはそんなことない。オープンクエスチョンのメールというのは稀だ。文書化されている時点で想定される返答のバリエーションは限りなく絞られている。そうなればこちらに可能な答え方はほとんど一意に決まるのだから寝かせる必要があまりない。おおむね「はい」か「いいえ」か「わからない」だ。「わからない」は「はい」か「いいえ」で判断できるような形にブラッシュアップするための投げかけなので、最終的にはやはり二つに一つだ。

夜は新日本プロレスの旗揚げ記念日興行の中継を見ながらシチューを食べる。明日は後楽園に行くのだと思うとうきうきする。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。