2021.02.17(2-p.16)

こうして毎日書くと言う習慣のいいところは、日々の悲しみを大事に溜め込むことなくさっさと文字として外在化できることで、きのうの便器の話なんかは放っておいたら一生の傷になりかねないが書くことですぐに笑い話になる。書いたものを目の前で読む奥さんが、ふふ、と声を漏らす。それで大体のことは報われてしまう。なんでもかんでも言葉にするというのは野暮であったり下品であったりするかもしれないが、僕はなるべく言語化しておきたいし、公開を前提としている以上、もちろん全てを書き出しているわけでもない。ここに書ける程度のことはどんなことであれ僕にとって大したことないというか、秘するほどでもなければ、大事に神格化していく類のことでもないということだ。僕は僕の書けることしか書けない、というのは、当たり前のようだが日記においては重要で、書けないことは書けないと知っているからこそ安心して日々書いていける。

スタンダードブックストアの中川さんが『プルーストを読む生活』を「追加注文できるのが特にうれしい本のうちの一冊」と言ってくださっていて、おひとりで丁寧にかつのびやかにあの棚を作っていることを、じっさいに棚の間に遊び、そしてお話を伺っているからこそ、しみじみと嬉しい。『プルーストを読む生活』を出してからこういう嬉しさがどんどんとやってきて、日記を書いてきて、自分で本の形を作って出してみてよかったな、そしてそれを松井さんに見つけてもらえてよかったな、と思う。僕は僕が面白いことなどとうに知っているし、そうした自己評価については本を出す前から特に変わらずめちゃくちゃに高いのだけど、そういう自分がどうとかではないところで、多くの人が知恵や手間や時間やお金をかけて作ってくれた今回の本が、こうして少なくない人たちに目にかけてもらえているというのは、個人のちゃちな承認欲求など軽々と超えて──そもそもこの合本版については僕のしたことなどほとんどないのだけど──いいモノを作ったという素朴な達成感というか満足を覚えるもののようだった。松井さん達の仕事がもっともっと報われて欲しい。アニメ化までがんばる。

『Fate EXTRA』をクリアして、ルート分岐やもろもろあるのだろうが、ネロちゃまとの結末にしか興味がないのでもうクリアした。明日からは『CCC』だ、と言うと、奥さんは、普段は僕が始めたゲームでも途中から奥さんの方がやり込んでだんだん僕は飽きてしまうので、あなたがその勢いでゲームをするのはすごいねえ、と呆れた。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。