夜明かしに備えて正午まで寝る。お昼を食べそびれたままふたりで下北沢へ向かうと一本前の電車に乗れて余裕ができたので、駅前で買ったパンを頬張りながらザ・スズナリまで歩く。少年王者舘『それいゆ』。流山児★事務所の『田園に死す』もめいっぱいに詰め込んでいたが、今回はそれ以上にみっちみち。通路も最後はパイプ椅子で埋められるから、火事でもあったらみな死ぬなと思う。感染症への感性が変わってしまって以来、このような密集にたいして高揚感より嫌さのほうが強くなってしまっている。それでも、観客の快適さなど知らん、観たいならおとなしくぎゅうぎゅうに縮こまりながら背もたれもない硬い椅子で二時間半耐えてみせろというような態度は好ましく、この場では明らかに劇の方が客よりも偉いのだ。開演して間もなく夕沈の姿につよく心打たれてしまう。話はまあ毎度のとおりで、カタルシスやワンダーは他の作品のほうが強いともいえるのだけれど、荒削りで綻びも多い筋運びはむしろいつ終えるともしれぬループの快楽をごろんと提示するようだった。しつこすぎるループの最中、お尻の限界が来てもぞもぞしてしまった。これでなんちゃっての終演が繰り返されたらきつな、と懸念していたら幕引きはあっけなく、まさか本当に終わったわけではあるまいと訝しんでいたら終わりだった。あと三回は客電がついて消えるものだと思っていた。
立ち食いのカレーを食べて、周辺を散歩しながら尻をほぐす。本屋で涼み、バーで時間をつぶす。ミルクシェイクを頼み、お酒は我慢する。奥さんと別れ、赤坂へ。集合時間が日付が変わる頃で、まだ時間があるので快活倶楽部で仮眠と歯磨き。