2024.09.09

集中力のなさ、注意の散漫がほんとうに諸々支障をきたすようになっている。奥さんは集中できた時間をタイマーで測って貯めていき、目標に設定した時間に達したらその日の仕事を終えるという工夫をしていて、それいいな〜と真似することにした。「Now Then Time Tracking」というアプリを入れて、さらにショートカットを使って、タイマーアプリを起動しているあいだiPhoneが自動で機内モードになるようにオートメーションを設定した。「read」「labor」「write」「diary」あたりでざっくり始めてみる。たとえば今日、「read」つまり読書時間は合計で1.1時間。これで『文學界』の中編一本と、『群像』の短編二本。五〇頁くらいだろうか。文芸誌一頁読むのに二分。二段組だから一段読むのに一分。前に計測してみたとき、人文書を読む速度はだいたい分速一頁だったから、まあこんなものな気がする。ほんとうはもうすこし速くしたい。今の速度だと、四〇〇頁の単行本を読むのに四〇〇分、つまり、ええと五時間と、一〇〇分だから、六時間四〇分か。合ってる? 往復の電車でまじめに読めると仮定すれば三日半。じっさいはムラがあるからちょうど一週間で一冊くらいがありそうなところ。月に四冊は重ための人文書が読めることが期待できるわけだけれど、現実としては一、二冊が限度だ。そのぶん軽めの本を挟むから、冊数としてはもうしこし増えはする。けれども、満足感があるのはがっつりした本だから、着実にそういうのを読んでいきたいような気がする。こういう計測はやり過ぎると満足や楽しささえも目標値や義務のようなものとして錯覚するようなナンセンスなことになるので注意が必要だけれど、うまく使えばより充実した気分を得ることができる。いまみたいに漫然と調子が悪いときこそ、記録と点検、改善みたいなことをして、着実になにかが前進していくような手応えを得たい。「diary」のタイマーを止めると、これだけの内容で二〇分。苦手な数字を多用したことで、ふだんより文字数は少ないような気もするし、じつはふだんからこのくらいの速さなような気もする。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。