さいきんあまり睡眠の質がよくない。そんななかでは悪くない眠りだった気がする。三日前、十一日に底を打って以降、気分は上がり調子で、もはや躁っぽくもあり、とにかくにこにこしている。我ながら危ういくらいのごきげんさで、四六時中奥さんにまとわりついている。夕方までは本を読んだり、ハンモックに揺られたり、小上がりに寝転んだり、てきとうな映画を流しながら遅めのお昼を食べたりのんびり過ごす。庭にいる羽虫がお尻の針を網戸に突き刺していて、こいつはなんだろうと調べる。シデムシのような、ミズアブのような、黒くて細長い虫はいろいろいるようだった。カメラが趣味の人たちが、マクロレンズで克明に撮影する虫たちを眺めて、さまざまな趣味とまなざしがある。カメラと文章というのは、巧拙の手前にものを見る目の異質さがあり、このように世界を見る目があるという面白さだけでけっこう成立してしまったりする。
いい時間になり、自転車に空気を入れて、本屋BREAD & ROSES に向かう。ハンドルにホルダーを実装したので、GoogleMaps のナビ機能を参考にしながら走れる。西陽が強いけれど風は涼しく、覚悟していたよりは快適。住宅街から森、畑を抜けて踏切へと出る道のリズムが楽しい。自転車は好きだなと思う。はじめは十五分で着けた気がしていたのだが、二度目は道に迷って倍かかった。地図を参考にするとやはり十五分程度で到着する。とはいえ、二〇分とみておいたほうが安全そうな感じ。歩道のない道をいくところがあり、けっこう怖いので迂回路を開拓した方が気楽そうだ。
青木さんとのイベントで、定員をすこし超えて十七人のご来場。きょうは僕は聞き手として青木さんの来し方を改めて尋ねていく。現在地から語り直すことは、つねに過去を別様の物語にする。最新版の青木真兵史を発見していくような時間になって楽しかった。きょうは青木さんが主役だしと期待していなかったのだけど、Life の事務回を褒めてくれる方や、たくさん付箋を貼った『会社員の哲学』を入社後の通勤で初めに読んでいた本なのだと見せてくださる方がいて嬉しかった。イベント終わりも人が長く居残り、僕らも本を買ったりしているとそこそこ夜も更けて、華屋与兵衛でご飯を食べながら青木さんと近況や悩みを話したりする。とにかく働きたくないというのがいちばんの問題だった時期を過ぎ、真面目に働かざるをえない中でいかに頑張らないか、という形で問題がより具体化されているような、単に絡め取られているだけのような。お店の前で駅に向かう青木さんと別れ、夜道を颯爽と転がしていく。顔に風を受けながら、ふだんより時速十から十五キロくらい早い速度で送られていく景色を眺める。高校は自転車通学だったから、まず思い起こされるのはそのころの感覚で、だからか自転車に乗るたびどことなく青臭い気分になる。精神のアンチエイジングとしてのチャリ。ただしあのころのノリで日焼けするとどんどん草臥れていくだろうから注意。