2024.10.10

寒い。二階の冷え込みがたいへんなことで、足元のヒーターを引っ張り出してきた。もとは奥さんが使っているもので、ボタンがひとつしかなく、表示も数字だけで何を表現しているのかよくわかたない。使い方がさっぱりわからず、恐慌をきたし奥さんに助けを求めにいく。水平を取らないと起動しないとのこと。ただ、数字が高いほうが温かいのか、それとも低いのかはよくわからないままだった。僕はボタンがたくさんあるほうがあっちこっち触りながら推測できるから使いやすかった。奥さんはボタンがたくさんあると使う気が失せるという。

とにかく寒い。つい三日くらい前まではしつこい夏バテにやられていたのに、一気に冬季鬱っぽいというか、体が冷えて、その冷えがしょぼしょぼした気持ちを誘発する。寒がっているのか落ち込んでいるのか見分けがつかず、とにかく身を縮こめてしょぼくれている。

奥さんは日中にクレームダンジュを作っていた。水切りヨーグルトにホイップにした生クリームとメレンゲを混ぜ込んでつくるふわふわのお菓子。小松菜と豚こまの常夜鍋で夕食にしたあと、祁門を淹れて、デザートにいただく。梨二個分を小瓶一個に煮詰めたジャムを載っけて食べる。贅沢な気持ち。ぬるめに張ったお湯に塩を入れてゆっくり浸かる。じんわり汗をかいて、温まる。そうするとだんだん気持ちも上向き、顔色も輝き、声にもハリが出てくる。

友田さんが出演しているテレビを見ながら日記を書く。知り合いが出演していると、たくさん喋ってくれ〜と緊張する。喋っていない時の振る舞いや身振りにこそ緊張は現れてしまうもので、だからこそ喋っていてほしい。黙っているとどんどん緊張してくる。終盤、きちんと友田さんパートがあって、そこまでに難しい難しいと繰り返されるのにうんざりしていた気持ちが晴れてくるようでもあった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。