2024.12.07

朝の鳴き声については、奥さんは耳栓をしたら気にならなくなってちゃんと寝たいだけ寝れるようになったみたいでよかった。きょうは僕が出勤で、奥さんが通院。日曜に猫が来てからなんだかんだでどちらかの人間が一緒にいた。それでも姿が見えなくなるとしきりに鳴きだすし、昨日おとといは落ち着いてきたけれど、ほぼ一日中べったりひっついてくるような猫だ。二日目だったろうか、奥さんがちょっと買い物に出ている間には犬のようにオウ、オウ、と叫ぶように鳴いていたともきくから、留守番に不安がある。しかし二人で出かけられないというのは不便だし、そもそもデートはいつだってしたいから、どこかで慣れてもらう必要がある。まずは数時間から始めて、どちらにせよ来週末は名古屋やBUCK-TICK で丸一日くらいの人間不在を試してみることになる。来週末にはトライアル期間も完了するから、それまでにどんなものか見ておく必要はあった。なんなら明日も、すこし家を空けてみたいような気もしている。

早めに退勤して、ケーキを買って帰る。十七時でもう真っ暗で、一日がおしまいな感覚になると、小学生くらいに戻ったような気分だ。猫はきょうはおとなしく、五時間くらい人間抜きで過ごしていたけれどずいぶん穏やかだったとのことで嬉しい。思えばまだ一週間。慣れない環境で心細く、人にひっついていたかったのかもしれない。もともと猫といえば、慣れるまでは決して近付いてこないものだと思っていたから、ずっとくっついているというのが緊張や不安の表現だとはなかなか思い至らなかった。落ち着いた様子でこの家に居るようすを眺めて、そんなことを考えた。まだ一週間。明け方に起こされるのもあってずいぶんと長い体感だ。それでもまだ、あたらしい環境に馴染むのには足りないくらいの短い時間である。人間はもうすでに猫のいない生活を思い出せなくなってきているけれど、猫はまだまだこれからこの人間たちとの、あるいはこの家での暮らしを組み立てるのだろう。時間はかかるものだ。人に臆さない様子を見て、適応力の高い猫だと判断したこちらが、せっかちにあれこれ導入したり配置を変えたりと手を入れるのが悪かったかもしれない。ごめんね。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。