早起きして水道橋へ。後楽園ホールの昼興業。DDT。朝ごはんだけでは心許なかったのでドームサンドというのをベンチで食べる。意外とおいしい。会場でもレモンサワーとカツサンドを買う。レモンサワー、すごくおいしい。後楽園ホールではビールよりレモンサワーだな、と学ぶ。オープニングマッチの六人タッグマッチから楽しい。MJポーとデムースのサイズ違い感がすでに面白いし、イルシオンと正田との体格差も生で見たほうが説得力がある。デムースの刺青びっしりドワーフっぷりがたいへん好みで、かれが夢虹と須見をふたりまとめてぐるぐる振り回して投げ飛ばすところで大はしゃぎ。
第二試合で平田が出て踊るとわくわくするし、男色ディーノの登場では手を挙げるか少し迷いつつ、おとなしく手拍子していた。もうすこし前の席で見る時は挑戦するかもしれない。今日の席は南側のいい席で、出入り口の上の一列目だから見晴らしがよく、リングが直線でよく見られる。試合後、サプライズでグレート-O-カーンが登場。椅子を出してきてトークイベントのような様相。そこにさらなるサプライズ。帝国のしもべとして熊谷健太郎が登場。ディーノのリップロックを嬉しそうに喰らっていたのに。帝国のTシャツの袖にひと腕ごとじらしながら通すたび、会場から、やめろーっと声が上がる。そこに、ディーノのパートナーとして稲田徹が乱入。まさかの声優同士のマイク対決にテンションが上がる。やんやと喝采を送る。O-カーンは、ふだんは面白枠扱いだけれど、スーツ着てくるとしっかり格好よいな。ずっと黒ずくめの中華マフィアでやっていけばいいのに。パンイチのディーノの肌の生っちろさとの対照をなしていたからというのもある。
第三試合で入場してきた青木真也が中村圭吾の背中をばしん!と叩いて発破をかけるところでぐっとくる。HARASHIMAはやっぱりいい。石田有輝も生で見るとかなりよかった。脇でいい仕事をする。続いてのスペシャル6人タッグマッチでのTo-yと高鹿もよかった。映像で見ていると高鹿のだめさが際立つように思っていたのだけれど、きょうはよかった。なにより若い二人を見守るMAOと遠藤が渋い。遠藤がお膳立てして、高鹿がロープを超えて場外に飛ぶ。そのあと遠藤が高鹿の頭をくしゃくしゃってして、目ぇ覚めたか、と声をかける。それまでもリングの外から、自信持て、返せ返せ、と声が聞こえていた。そうやって励まされて頑張る。
第五試合でようやくシングル。上野勇希 vs スーパー・ササダンゴ・マシン。機材トラブルの際に湧き上がるパワポコール。プレゼンによって不可逆に定義されてしまう試合。マイクの力を思い知る一戦。
セミファイナルのスペシャルシングルマッチ。これを見にきたのだった。石井智宏 vs 飯野雄貴。DDTのでかいのと、新日のごついののぶつかり合い。とてもよかった。こういうのが見たかったというもの全部見せてくれるタイプの怪獣映画。惜しみなく、じらしもなく、ただシンプルに力比べ。贅沢に体力を蕩尽する削り合い。起き上がり小法師のように何度でも立ち上がる石井。ただ立ち上がって次の打撃を喰らいに行く。徹底的な受動性が、なぜか異様な迫力を帯びて飯野をコーナーに追い詰めていく。打っているのは飯野なのに。大きな体がどしんどしんと衝突するたびにどよめきと歓声があがる。もうだめだ、と思っても何度でも復活する。ふたりともターミネーターみたいな不気味ささえある。シンプルに、デカくて強いって面白い。
セミですでにお腹いっぱいで、メインイベントのクリス・ブルックス & 高梨将弘 vs 佐々木大輔 & KANONは序盤やや眠気に襲われたけれど、ユニットのみんながわちゃわちゃ場外で乱闘する展開になって楽しくなってくる。結果的にまた引き込まれる。ゴムパッチンは残念ながら阻止されてしまった。クリスが最後にガンの手術からちょうど一年なことをマイクする。そしてみんなでメリークリスマスを合唱。
あー、楽しかったねえ!とほくほくして、まだ陽が高い。闘魂SHOPに寄り、そのまま神保町まで散歩。街の雰囲気が年末で、そうか、もう今年は終わるのだなと思う。今年は激動だった。今月の初めに猫が来て以来、すでに猫のいない生活を思い出せなくなってきている。そもそも夏の引越しの前も、春の家を買う以前も、すでにあまりに遠い過去で、うまく思い出せない。一年の中に、暦の区切り以上の途絶と更新がいくつもいくつもある。東京堂書店納めとして本をたくさん買う。代わりに読む人から出た青木淳吾の新刊をまずは。それから、今年を象徴するような二冊、『新たな距離』と『非美学』に教えてもらった本を次々と手に取る。大江の「文学ノート」が収録されている『書く行為』、上妻世海『制作へ』、平倉圭『ゴダール的方法』を買うのであればとちくま学芸文庫の『ゴダール 映画史(全)』も買う。評者としての自意識を育んだ一年から、来年は実作者としての手応えを得ていきたいという意図が反映された選択。手を動かし、その思考をアナログに把握したいという気分。岩波の『哲学・思想辞典』も欲しかったのだけれど品切れ。思い立って日本の古本屋で検索してみると愛書館中川書房で半額で買えそうとのことで行ってみる。あ、ここは僕がプルーストの揃いを買ったお店だ。分厚い辞典を購ってほくほく。ずっしりとした紙袋は手提げ部分がちぎれたり、そこが抜けたりしそうで怖いので抱えて歩く。だっこしているとだんだん可愛く思えてくる。底をぽんぽんと叩いてあやす。
僕たちのいない夜の後楽園ホールでは新日本プロレスの興行があり、サンタクロースがやってきた。プレゼントの中身はびかびか光るサングラスで、え、と思って息を呑む瞬間、客電が落ちてあの入場曲が流れる。ガン治療で無期限休養中だったエル・ファンタズモが、二ヶ月足らずで帰ってきた。すごいプレゼントだ。この報に、昼のクリス・ブルックスのマイクを思い出していた。というか、クリスの言葉を聞きながら、ふたりはELPのことを思い出さずにはいられなかった、そのことを思っていた。う、嬉しいね。東京ドームでも見られるんだって。これは嬉しいね、とふたりで涙ぐむ。
