たこ焼きが食べたい、と朝に奥さんが言った。寝坊して、午前中はもういいや、とのんびり高菜チャーハンを朝ごはんに作っているときの立ち話だった。ホットプレートだとどうにもうまくいかず、大阪の家庭には必ずあるというガスコンロ式のタコ焼き器がよさげとのことだった。「炎たこ」というのがいちばんいいらしい。食後、猫を膝にお招きして撫でくり回しながら、家出るのめんどいな、と考えていたけれど、これで用事ができたなと思う。じゃ、きょうそれ買ってくるね、と家を出る。
昼休みに家電量販店で「炎たこ」を買う。けっこう重い。そりゃそうか、鉄か。
二キロほどの鉄を運びつつも『ヤギの睾丸を移植した男』を電車で読む。こういうのは気合いだ。あとは網棚をうまく使おう。非常に面白い。一九二〇年代に、精力増強のためにヤギの睾丸を移植するというトンデモ治療で莫大な財を築いた悪党の一代記。そこにはアメリカの医療制度の欠陥、ラジオというメディアの勃興、キリスト教原理主義者たちのコミュニティなど、いまにも通じる構造がある。新興メディアの「親しみやすさ」が、既存のメディアの蓄積や、専門機関の専門知を、対抗すべき「権威」として敵視して、ナンセンスな「事実」をつくりあげてしまうという事態、なんだか最近もよく見るやつだ。
夜はたこ焼き。かなり美味しくできた。ふわふわで、もはや明石焼きと見分けがつかない。なんなら並行して作ってくれていた明石焼きのほうが粉らしかった。しかし出汁で食べるとたしかに明石焼きのほうが明石焼きなので感心する。ガスの効果か、いつもより手早く仕上がる気もする。たこ焼きって楽しいな。好きだ。
ルドンはお腹を舐めすぎてはげさせてしまっているので、布製のエリザベスカラーをつけられる。家に来た頃もお腹を舐め壊していて、どん兵衛の容器を装着させられていた。懐かしいよね、でも、はやく取りたいね。やたら毛が抜けるね。ブラッシングすると、フェルト人形が作れそうなくらいごっそりいく。