朝、コーヒーメーカーがタイマー通りに作動すると、ガガガガと大きな音を鳴らして、ちょうど取り壊しの夢を見ていた奥さんは、わああっと言いながらベッドの上で猫のように飛び上がった。その驚きようが可笑しくてふたりで大笑い。
お気の毒ですわ。眠れないってのは、ほんとに辛いことですもの。わたしたちは、それはよく寝ます。いつ寝て、いつ起きてるのか、それも分からないくらいです。このあいだお話ししているところを見かけましたけど、あの痩せっぽちのアントニエータなんか、立ったまま居眠りするっていうので有名なんですよ。立って居眠りしながら、ちゃんと話をするんです。(…)
ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』鼓直訳(水声社) p.391-392
きのう強い風が吹いていたからか、春めいてきた。
ところでもし読者が、この課題を解決する私の遣り方は厄介で骨が折れると言って不平を訴えるなら、彼は私の仕方よりもっとやさしい仕方でこの問題の解決を自分でやってみるがよい、そうすれば恐らく彼は、これほど深い研究の仕事を自分の代りに引受けてくれた人に感謝するだろう、そして事柄の性質にかんがみて、私の解決のほうがまだしも平易であることがわかり、いささか驚嘆の念を表明するであろう。完全な普遍性(数学者はこの語を、すべての事例に対して十分であるというふうに解しているが、それと同じ意味で)をもって〔普遍的に〕解決し、ついに読者が本書で見られるような分析的な形〔分析的方法による説明の〕で提示できるようにするためには、実に多年にわたる努力が必要だったのである。
カント『プロレゴメナ』篠田英雄訳(岩波文庫) p.59
カントは日に二ページくらいのペースで、とにかく五分は触るというのをしてる。引き続き、難しくて読めないって言われたことをめっちゃ気にしてる。
労働をはやめに切り上げて、御徒町。かつては定期券が使えた街。ずいぶん久しぶりな気がする。学術バーQでおしゃべり。阿部さんとは往復書簡を楽しくやり取りし、それでけっこう満足しているところもあって何を話すのだか見当もついていなかったけれど、開始早々にお酒を飲み出してどんどん機嫌よくへらへらしていたらあっという間だった。何を話していたのだかあまり覚えていないけれど、たぶん素面でも同じことだろう。客入りも心配していたけれど満席にちかく、熱気というのは比喩ではなくふつうに暑く、発言も活発にあったり、なんだかかなり愉快だった。マイクがないので大きな声だす。それで余計に楽しくなる。阿部さんとのおしゃべりの愉快さはかなり男の子な感じがする。男子のはなやいだ駄弁り。放課後の気分。わざわざ会いに来てくださった方との嬉しい邂逅もあり、とてもごきげんで、ふわふわしていた。奥さんも来てくれていて、こんなに人いるなら来なくてもよかったな、と言いつつ、ポッドキャストを聴いてくれている方からお土産をいただいておしゃべりもできて、だから来てよかった。にこにこと帰宅。即寝。