2025.05.18

ちゃんと七時に起きる。僕たちは起きられないかもしれないからその場合はしれっと出ていってくださいねとお伝えしていた稲垣さんは先に起きていて、ルドンと遊んでくれていたようす。くれました、と膝にこぼされた朝ごはんを見せてくれる。紅茶を淹れて、ぶどう、ねじりパン、チーズの朝食を差し出す。自分にはコーヒーを淹れる。朝の会話は夜のおしゃべりとはトーンが変わる。奥さんも起きてきて、三人で喋っていたらもう出る時間で、慌ただしくお見送り。そのまま録音。誕生日プレゼントのDJI Mic Mini の試運転。かなり音がよくなったような気がする。たぶん。

しっかり昼寝をして、かるめにお昼を食べて、新宿へ向かう。文化系トークラジオLife のバーベキュー。京王百貨店の屋上に到着して、目ぼしい集団を見つける。地下の駐車場までみんなで降りて、荷物をせっせと運ぶ。ゆるゆると場がつくられ始まっていき、人見知りを発揮して身の処し方を探っているうちにどんどん時間は過ぎ、えいやと飛び込んだテーブルで食べたお肉はたいへん美味。しかしお酒を控えるべきで、炭酸水ばかり飲んでいた。そろそろ出ないとな、というタイミングで本の宣伝をしたら、持っていった分はほとんど売れてしまい、気前のよさが嬉しい。神保町に向かいながらとにかく煙臭くないか、そればかりを気にしていた。会いたかったリスナーさんにもお会いできて満足。でも、もっと話したい方々がたぶんあの場にはたくさんいて、まわりきれなかったのが悔やまれはする。オフ会での社交力、身につけたい。どの程度こちらが知られており、知っている人なのかを肉体からは判別ができない場での、おしゃべりを楽しくする最短経路の発見と実行。こればかりは経験を重ねるほかない。重ねたところでできるようになるとも思えないけれど。きのうから人との関わり方について反省ばかりしている気がするが、むしろお芝居の本番が始まって、ふだんの振る舞いを稽古として感覚する回路が開かれているということな気もする。

二日目。人数がずいぶん減って不安だったけれど、手慣れたのかゲネがないからかずいぶんゆとりがある。丹澤さんのゲネ写を撮る。連写しまくってパラパラ漫画みたいになる。むしろ開場してからの人手不足が顕著で、遅れ客対応で見ることが叶わなかった。残念だ。裏まで漏れ聞こえる音から判断するに、丹澤さんも南出さんも初日よりもぐっとよくなっている。いいですねえ。ドリンクはきのうほど売れず、終演後の本の売り上げもそこそこ。というかほとんどが遊星Dのお客さんで、場がそういう感じになっていた。主催側がアウェイになるという面白い状況で、なんとなくそれはカハタレに似合っている気もする。自分たちの用意した場で所在がないこと。気遣い。分身。打上は乾杯の音頭もなくゆるゆると始まる。リーダー不在だから、誰が音頭を取るべきか誰もわからない。気遣い。分身。気がついたら終電が近く、慌てて帰る。楽しかったな。カハタレはこれからもまだまだ分身するはずで、そのお手伝いができれば嬉しい。

へとへとで、帰り道が永遠に感じた。もう歩けない。眠すぎる。体が重い。家が遠い。もうだめだ、と呻きながら一歩一歩進んでいく。最後の坂道。奥さんのトートバッグをふたりで持って、ぶんぶん振ると遠心力で前に引っ張られる! すごい! これで帰れる! ふたりではしゃぎ、ぶんぶん鞄を振って、すいすい歩いていく。もう十分前にこれに気がつきたかった、と笑う。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。