寝坊。午前から張り切って原稿。ちょっとまえまで依頼のあったその日に書き上げて返すくらいのことをしていたのに、さいきんはぼんやりしているとギリギリになることも散発しており、よくないなあ、と思う。メールの返信もすぐさまだったのが遅くなってきており、昔はそうやって寝かせることのできる人、通知にすぐさま反応しない人の泰然自若とした振る舞いに憧れさえ覚えていたものだったけれど、いざ自分がそうなってみると、むしろなぜあんなにも瞬発的に返せていたのだかわからない。
昼食をはさみ、二時間半くらいで一件仕上げ、久しぶりにお行儀の悪い書き方を存分にしたというか、こういうのが楽しくて書いていたのだったと意識的に思い出すようにして書いた。奥さんにレビューしてもらうと、苦笑されたので、スベっているかも、と思いつつ、それはそれで面白くしてくれそう、と媒体を信頼して、そのまま送る。喜んでもらえたので安心した。
「H.A.Bノ冊子」の原稿は先月末までだったけれど松井さんに甘えて遅れていて、そのくせ後回しにしていた。アイリッシュシチューを作りながら準備をすると、捗らない。料理と書くのは並走させられないのだなとわかる。ルドンは、暑さのせいか、一進一退のお腹のハゲだけでなく、耳の裏も搔き壊してしまってかさぶたになっていたり、背中のかさつきもぶりかえしていて、季節の変わり目はつらいね、と声をかける。猫自身はマイペースに構われたかったり遊びたかったり、尻尾を膨らませて興奮したりする。けっきょく、冊子のほうは書き終えられず、もっと遅れそう、とメールを送る。
余裕ゆえに滲み出るノーブルな鼻持ちならなさを引き受ける。育ちのよさゆえの愚鈍さを恥じない。今週配信した録音のあと、けっきょくあなたはどういうおじさんになりたいの、と奥さんに問われてからずっと考えていて、こうかな、と浮かんだ文字列。わからない。夕食のあいだ見ていたアントンの試合を見ながら、これはひとつの理想かも、とは思う。食後は録音。『花束みたいな恋をした』の話。二時間半。最長記録更新したかもしれない。マイクを変えたからか、奥さんの労働が忙しいことで僕がお喋りの機会に飢えているのか、長時間化の傾向にある。映画そのものより長くなるとは。なんかかなりはしゃいだ気がする。そのぶん、まとまりや脈絡はない気もするし、僕が話し過ぎた気もする。それから『オブラ・ディン号の帰還』を遊ぶ。僕はこれかなり好きだな。思ったより時間がかかりそうだし、いまのところさっぱり特定できていないけれど。