2025.10.05

冷凍の肉まんを解凍して、鶏がらスープに沈めて食べる。お粥や重湯のような感じでわりといい。正午までのんびり支度して、日暮里にデートに出かける。羽二重団子の喫茶でお団子を食べるというのが主目的。僕は焼きとあんこ、奥さんはお月見団子と焼きのセット。お団子はできたてがおいしい。おそらく出来たての団子はなんでもうまいだろう。北千住のかどやの団子はとても美味しかった、と思う。あそこで団子を買って、荒川の河川敷でほの温かいやわやわの団子を頬張るのは至福だった。席から往来を眺めていると、日暮里はめいめい好き勝手な格好をしている人が多くて楽しい。目の前の雑居ビル前に大きなトラックが停まっていて、延々と積荷が下ろされていく。音響機材のようにも見えるから、カラオケ屋の荷物だろうか。いつまでも台車が往復しており、見応えがあった。

霊園の方へと抜けていき、谷中の店店をひやかしながら散歩する。籠や箸を物色し、決めきれず。鞄を見たかったけれど、マザーハウスは閉店してしまったようだ。団子だけだと物足りず、なにかしょっぱいものを買い食いしたかったけれど、甘味が目立って、おいしそうだけど今じゃないんだよなあ、と見送りながら歩く。ひとまず不忍池の方向にざっくり向かう。歩くと色々思い出す。あそこも行ったね、ここでも遊んだ。僕は普段はすべてを忘れているくせに、道はだいたい覚えているし、場所場所にいれば鮮明に思い出す。記憶というのはこの体ではなく、場所の方に宿っているという感覚がかなり強くあるのはそのせいだろう。奥さんは道が全く覚えられず、手を引かれながら拐かされているような、どこに連れて行かれてしまうの?という顔をしている。それでもエピドードはいつでも思い出せるのだから、記憶のありかたというのは色々ある。上野公園に近づくと、ここは知ってる!と元気になった。

上野東照宮のぼたん苑でダリアのお披露目をやっていて、きれいに咲いていた。ダリアは咲き方に名称がついているらしく、フォーマルデコラティブ咲き、セミカクタス咲きなどそれだけではさっぱりわからない語が並ぶ。そもそも品種が多過ぎて、ダリアの名前も変だから、知らない謎の競技の品評を見ているような可笑しさがある。浮気心のインフォーマルデコラティブ咲き。原色のような発色も嘘くさくて面白かった。広場の方ではラテン系の音楽が大音量でかかり、いろんなひとらが踊っていた。タコスとナチョスとビールを買って、噴水の周りに腰掛けていただく。チチャロンサンドとピスコも買い足す。野外で飲み食いするのはそれだけでずいぶん楽しい。こういうことをするのにいい気候になってきた。御徒町まで歩いてユニクロで秋物を買う。ジーンズの直しを待ちながら金魚で一杯。それから三角で〆ようかと考えていたけれど、満腹なので帰った。開始が遅めだったけれど、ずいぶんと充実した一日で、やはりたくさん歩くようなデートがいちばん好きだ。歩いている間、あれこれとおしゃべりできるし、ふたりで何かを発見できるから。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。