2025.10.23

集合時間よりもすこし早めに到着した蒲田駅で降りてひとまず近辺をぶらついてみる。振り返ると駅の近くのビルの屋上に観覧車を見つけて、思わず引き返した。東急プラザの屋上のようだった。エレベーターの「R」を押す。テーブルや椅子がたくさんあって、いまはまだ閉じられているけれど屋台のようなものが二三ある。その向こうに観覧車。遊園地というには物足りないが、ゴーカートはあった。すでに楽しい気持ちで駅の改札まで下りて行って、まずは二人と合流したのが十三時。

ひとまず今日は西口を試してみることにして、まずは金春新館で餃子とビール。エビマヨと春巻きも頼んじゃう。十四時で閉店とのことなので、それで出て、一本向こうの商店街にある酒の旭屋に入る。レジで二百円のコインを買って、奥の試飲コーナーの機械に入れるとお酒が出てくる。それをお猪口で受け取って立ち飲みできる。ここで一杯飲むうちにさらに二人がやってきて、みなでもう一杯注いで乾杯する。立ったままおしゃべりして、味噌は炊飯器で四日ほどかければ自作できるらしい。十五時になったので開店したてのなまけに向かう。開いて一分で入ったはずなのだけれど、すでに先客がちらほらいる。入り口の券売機で二千円の券を買うと、連なったチケットがべべべーっと吐き出されてくる。百円、二百円、三百円、五百円のチケットを適宜ちぎってテーブルの名前と食べたいものを書き込んで店員に手渡すとお酒やつまみを持ってきてくれるスタイル。奥のスペースに五人で身を寄せ合いながらハイボール、バイスサワーと飲んでいく。海老やかつお、にんにくホルモン、煮込みなどをおいしくつまみながら、大相撲のプレゼンを面白く聞いたりする。大相撲が好きなその人は酔えば酔うほどしあわせの感受性が研ぎ澄まされていって、たのしい!と連呼して、そのたびささやかな拍手が起こり、いい酔っ払いだった。僕が石黒亜矢子の阿吽猫ブルゾンで、虎柄シャツのひとと、孔雀の刺繍が入ったアウターのひとが揃っていたのでおもしろく、三人で並んで背中を写真に撮ってもらう。

斜向かいの最後の楽園レバーランドの二階に移り、レバーの串カツがおいしかった。据え付けのテレビでドラフト会議が中継されていて、なんで選手が自分で行き先を選べずに、ホテルの宴会場に集ったおじさんたちが籤引きしてぜんぶ決めるのかわからなくて理不尽だと思ったが、さっきの大相撲の人は野球も詳しくて、わいわい解説をしながら飲んでいたから楽しく見れてしまった。たしかに見世物としては面白い。グロテスクな人間競売の戯れで巨額が動く。歪に戯画化された就活だと、たぶんその場でも話されていて、これはかなり人格がゆがむよなと思いつつ、ではかれらとは較べるべくもない収入のために自己分析やら面接やらを重ねた僕らは果たして無事だったのかというと微妙だ。

日が暮れて、みながこれから酒場に繰り出すという時間に飲み終えて、みんなで屋上観覧車に乗ろうじゃないかと屋上に上がるのだが、すでに営業時間を過ぎていて、虚しく発光するだけで回転を止めた観覧車をうらめしく眺め、諦めて解散となった。

昨晩のポトフをカレーにして夕食にした。新日本でジュニアのタッグリーグが始まる。金丸東郷に見惚れる。今日のおしゃべりの面白かったところを奥さんに伝えたいと思って話しだすのだけど、話してみるとあまりにそっけなく、あれ?と思う。なんか、ふわふわ楽しかったなあという手応えだけがあり、内容が伴っていない。酔っ払いなんてそんなもんでしょ、と言われる。それはそうなのだが。頭痛がして飲み過ぎたかと思ったけれど、お風呂で温まったら治まったので気圧だったのかもしれない。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。