2025.12.04

いつ行くの、と問われたのが一日か二日前で、きょう行けるなと気がついたのが今朝。すぐ支度して家を出れば間に合いそうなので予約をしてしまい、ぱっと出る。新宿の眉サロンで、どうしたいですかと訊かれると奥さんから聞いていたので準備していた通りに話す。いさましさや凛々しさではなく、やさしさや柔らかさの方向で。わかりました、と応えがある。わかってもらえるのは嬉しい。ペンで仕上がり図を直接眉として書き、この形、と確認される。メガネを外しているし、どちらにせよ仕上がりよりは太く濃い輪郭で見えるとのことなので当てずっぽうでよしとする。目元を薄布で保護されて、四十度のワックスが刷毛のようなもので丁寧に塗られていく。先に縁取られた眉の外縁をなぞるように温かさが感知され、このあたりがいらない毛の場所なのだなと考える。目元が覆われていなくても鏡がなければ不可視な場所で、なにやらが行われていく。ワックスがあるていど塗られると、上から紙かなにかを押し当てられ、押し当てられたと思うと同時にビッと剥がされる。それから抜毛の衝撃を和らげるためだろう、同じ箇所を指の腹でかるく圧迫される。これを両方の眉の輪郭ぶん繰り返される。痛みはそこまでない。仕上げにピンセットか何かで一本ずつ抜いてもらって、鼻の穴やおでこも綺麗にしてもらえる。

せっかく新宿まで出たのだし、と初台まで歩くことにして、フヅクエの定食で遅めのお昼。日記についての関心をでっち上げるためにこの数日の日記では日記について書いてみようと思い、歩きながら昨日の日記を書いた。山本浩貴『フィクションと日記帳』と『季刊日記』を読む。「日記と重力」はやはりとても大事だ。いつだかドゥルーズのアレンジメントっていうのは要はレイアウトのことなんだよ、と人に教えてもらったことを前に読んだ時も思い出したし、今回も思い出す。だから山本の日記論を読むと、自己享楽的な体と環境とが相互に配置をあれこれ変えてみるようにして書き直し、塗り重ねる印象をもつ。

京王新線でそのまま菊川まで出て、sabo に向かう。集客がかなり心配だったけれど、結果的に壊滅的というほどではなかった。丹渡さんの両親や知り合いが主だったろうか。丹渡さんの話をどう引き出すかを試しながら、このへんまでなら踏み込んでも大丈夫かな、と進行していく。気を遣いつつ気を遣ってない感じで話すためにビールをたくさん飲んで、危ないなと思っていたら最後の最後に並べてある本にビールをこぼしたのでしまったことだった。くたびれた。駅までシャーク鮫さんが付き合ってくれて、面白く聴いてもらえたようだからひと安心。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。