2024.09.11

午後、Sさんが引越し祝いのハンモックを持ってきてくださる。糸の色は奥さんの好きそうなものを選んでくれていて、部屋にもとても似合っていた。嬉しくて、しばらくゆらゆら揺れる。そのまま会議に出てしまおうかと思ったが、差し込む日差しが強くて汗だくになってきたので断念。

奥さんは体調がすぐれなくて、労働を早上がりして鍼灸に向かう。僕は夕方に買い物に出掛けて、スーパーには米がなく、ドラッグストアで買うことができた。けっこうな荷物になってしまい、大変な思いをする。

夜、横着して電気を消したままくだると階段から落ちて、手すりに腕を打ちつけて擦り傷と内出血とで散々な目に遭う。

夕食をつくっているうち、気持ちがぺちゃんこになった。座り込んで泣きたくなった。何も気力が湧かない。そもそもあらゆるものごとに興味を持てない。もう心が動くことなんてないのかもしれない。鬱というのはこういう状態を言うのかもしれないし、そろそろ僕もつかまってしまうのではないか。こんなに気分が晴れず、頭に靄がかかったようなのは初めてな気がする。ブレインフォグというやつだろうか。もう僕はすでに手遅れなのではないかと怖くなる。そんな話を奥さんにすると、足や背中を揉んでくれる。その上でこう言う。『差異と重複』を読み返してみるといいんじゃない? あなたはいつも秋が近づくとそんな感じだってわかるから。

揉んでもらううちにすこし元気がでてくるようでもあったから、そんな気もしてきた。本を取り出すのは億劫だから、自分の日記を検索してみる。Notion の日本語検索は使い物にならないと知れたが、過去の九月の日記を遡っていくと面白いぐらい同じようなことばかり言っている。僕は、僕に重複してばかりだ。

これが去年。健康診断の日は、いつもこうらしい。

これが一昨年。このころから頭は働いていなさそう。

これが三年前。先延ばし癖はすでに確固たるものになってる。

四年前はこう。かなり最低な感じがする。いまのほうがましなんじゃないか?

わかったのは、僕はいつもだめそうで、奥さんはいつも聡明で、優しく、正しいということだった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。